時空を超える「これすき」

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映画「ジグソウ:ソウ・レガシー」 ネタバレあり感想 〜粗さも薄さもひっくり返せ〜

 

 

 

 

 

【前書き】

 

 こんちには。皆さんはショッキングなゴア描写って見れますか?


 自分はどちらかというと苦手な方ですが、全く見れないというわけでもなく、どちらかというと苦手故にたまに目についてしまうと妙に頭にこびりついて忘れられなくなるタイプです。


 そんな自分はある日たまたま「ソウ」というシリーズのことを知ってしまったのです。


 猟奇的殺人犯「ジグソウ」、彼が起こす「命の価値を問う」ゲームに巻き込まれた罪人たちのドラマが巻き起こされるソリッド・シチュエーション・スリラーの人気シリーズ。予告編をチラ見したことをきっかけに、ソウシリーズのトラップ集なんて動画を見てしまったからさあ大変。


 一度頭にこびりついたものはなかなか拭えず、断片的にしか知らない分想像力であらゆることを補ってしまう。そうなるともう日常にすら影響が出始めます。


 これではあかんと、観念して作品を見ることにしました。


 ということで今回見るのは8作目。シリーズのリブート作として作られた「ジクソウ:ソウ・レガシー」です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【点数】

 

5.5/10.0点

 

 

 

【短評】


ラストのどんでん返し一点のみの映画だが、後味は悪くない。

 

 

 

【良いところ】


・後半のどんでん返し

 

 今作のストーリーの魅力はほぼこの一点に集中しています。まあ要素自体は色々あるんですけど、結局のところは「なぜジグソウが生きているのか?」、「犯人は誰なのか?」あたりが話の中心です。


 そしてこの点については結構うまくいってたんじゃないかなと感じました。無理矢理感は多少あれ、時系列の錯誤に意外な犯人という驚きの要素はたしかにありましたし、演出自体も冴えていてテーマ曲も相まって中々パンチのあるクライマックスだったと思います。

 

 

・オチとテーマ性

 

 そして上と連動したクライマックスも結構良かったです。ローガンが黒幕と判明し、ゲームの締めを行うシーン。凄惨ながらなんか妙に綺麗さがある殺し方とスマートなセリフ、ピシャっと扉が閉じて終わるラスト。なんだかこれが異様に決まっていて、ある種のダークヒーロー的なかっこよさがあると思いました。


 なんだかんだローガンのキャラクター性はある程度語られていたため割と説得力があって、それプラス絵の強さでかなり締まったラストになっていたと感じられたのが大きそうです。


 細かいところを無視して考えれば、このラストだけで良作と言ってもいいと思います。

 

 

 

【うーんなところ】


・ミステリーとゲームによるスプラッタの噛み合いの悪さ

 

 そもそもなんですが、この作品の「派手なスプラッタのあるゲーム描写」と「ジグソウの正体を追うミステリー」が噛み合ってないような気がします。ゲームのシーンが作り込まれてるのはわかるんですけど、物語全体の役割としてはジグソウのキャラクター性の補完+時間軸の錯誤のためのミスリードでしかなく、そこそこ時間かけて描かれたゲームの参加者たちの描写があんまり意味がないというか。


 ゲームと中と外のつながりが薄いせいでミステリー方面で使える尺も相対的に減っていて、双方が薄くなっちゃってるような気がしました。

 

 

・掘り下げの足りないキャラクター

 上記から派生する話ですが、やっぱり色の関係でキャラクターが薄いなと感じます。ちゃんと掘り下げがあるのってローガンだけなんで。
 ゲーム参加者とかが割とろくでもない奴らなのもわかるんですけど、そういうところの描写があっさり過ぎるのも困ったもんだなと思いました。

 

 

 

【総評】

 

 見終わってから、本作はそもそもの全体のシナリオが「本作がソウシリーズであること」をフリにしている作品なのだと思いました。


 そもそもジグソウという存在が死んでいること、彼がしてきたこと、そういったものを前提に組み上げられてきた作品だと思うので、ここにどんくらい思い入れがあるかで作品自体の評価も変わりそうだと感じましたね。


 トラップ要素とかも、「ソウらしさ」の表現と来て使われている感じで。


 自分はシリーズの大まかな概要は知りつつも初見という感じだったので、まあ美味しさは理解しつつものめり込みきれなかったのはそういうところなのかなあと思います。


 ただじゃあ悪い作品だったのかと言われるとそうでもないとは思います。どんでん返し自体は面白い試みでしたし、作品としてのクオリティはそこそこを保っていました。


 そこから一歩抜け出すには今ひとつ力不足だったのは否めませんが、悪くはなかったです。

 

 

 

 

正反対な君と僕 第51話『探り探り』 ネタバレあり感想

前回の感想

 

 

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 さて今回の正反対の君と僕は山田西回。


 春休みにデートする二人の、付き合いたてのぎこちないけど甘酸っぱい栄養素に満ち溢れた回でした。


 相手を気遣うゆえについ遠慮してしまう中で、水族館デートを通してちょっとずつ相手に自分を出していく過程が何ともいじらしい回でしたね。

 

 今回、改めて二人の正反対なところが強調された気がして、それが二人の相性の良さを表してるなあと感じました。

 

 西さんは割とのめり込んじゃうと視界が狭くなっちゃうタイプだと今回の話で言及されていますが、「自分が夢中になるとそうなっちゃう」という自覚があるがゆえにふとした瞬間に自分の行動が気になってすっと身を引いてしまう節もあったりします。

 

 ただ山田はそういう時の西さんが見せる表情に惹かれてるわけで、本人が気にしている、ちょっとやめたほうがいいかな? という部分を好んでいる。それが二人の関係の始まりでもあったわけですし。

 

 一方で山田は普段わりと大雑把でお気楽なんですが、一度ガッツリ深くハマってしまったものに対してはクッとなってしまって、普段から考えないようなことまでぐるぐる考えてしまうわけです。そしてそんな風に考え込んだ結果出てくる言葉を、西さんがまた受け止めてはくすぐったくも喜びを覚えて……。

 

 そんな、正反対な互いの気質を互いに嬉しがってるのが二人の関係なのだということを改めて感じることのできるエピソードだったと思いました。

 

 

 ていうかこういう関係性、やっぱいいですよねえ。考え方とか捉え方とかが全然違うんですけど、全然違うところを互いに好き合ってるって超理想的で。凸凹なピースがピッタリハマってるというか、真反対故に磁力で惹かれ合うというか、ありきたりですがそんな言葉が似合う二人ですよ。

 

 あとその他の点でいうと、この漫画はやっぱり表情の描き方が好きだなあと思いました。この感想を書くようになってから結構隅々まで見返す癖がついたんですが、今回は細かい一挙一動に伴う西さんの表情がめっちゃかわいい。

 

 

 ね。山田が惚れちゃうのもわかりすぎるというか。

 

 多くの言葉をつかさなくても、絵の力でキャラクターの魅力を伝えてくれるのはこの漫画の好きなところだなぁ〜と改めて感じました。

 

 今回まだ名前呼びのきれいな落とし所は見つからなかったですが、今後はどうなるのか。

 

 この漫画だと他の組み合わせのメイン回でさらりと山田が下の名前で読んでるシーンとかぶっこんできそう。

 

 あと、鈴木谷とのダブルデート回も実現してほしいなァ……。

 色々希望が膨らみつつ、次回へ続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

集英社 阿賀沢紅茶 [第51話]正反対な君と僕

 

 

正反対な君と僕 第50話『バースデー♪』 ネタバレあり感想

 

 

 

 えー、本題に入る前に今週のタイラズマについて。

 

 

 

 

 

 

 

集英社 阿賀沢紅茶 [第50話]正反対な君と僕 より

 

 

 んんんんんんんん゛っ!!!!!!

 

 

 

 

 

 

前回の感想

 

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 失礼しました。


 さて今回は記念すべき50話。


 内容としては久々の鈴木谷カップルの単独フィーチャー回でした。


 同日発売の6巻を読んだんですけど、この巻表紙が始めて鈴木谷コンビじゃない(山田西)し、内容としても単独で鈴木谷の二人が取り上げられた回がないので、本当にかなり久しぶりになります。多分39話の谷実家回以来? つまり11話ぶり。久々だ……。

 

 

 

 

 

 最近は山田西とタイラズマによる恋愛初期段階のときめき溢れる時間の話が続いてましたが、今回は鈴木谷の1年弱付き合ってきたがゆえのお話でしたね。


 正直最近は読者目線だと家族との顔合わせも済んで天下無双状態かってくらい安定していたと思う二人の関係性ですが、進級という環境の変化をきっかけに二人の不安が顔を出してくる、と。

 

集英社 阿賀沢紅茶 [第50話]正反対な君と僕 より





 良くも悪くも今思っていることに全力でいられた最初の頃と比べると、これからも一緒にいるっていう未来が見えてきたからこそ変化に敏感になって不安を感じるんでしょうね。本質的には鈴木も谷も繊細なところがあるので小さな種が出てくるとそれがどんどん大きくなるというか。正反対に見えてこういうところ似てるのが可愛らしい。


 先にその不安を見せてしまうのが鈴木で、漏れ出したその不安を谷が正面から受け止めてあげる……というのは割とそれっぽさのある部分。そういうところに鈴木は惚れてんだろうし。


 でもそこから更に一歩派生して、そんな言葉を向ける谷自身も同じことを考えてる……というのがまた谷くんらしい。今回も誕生日プレゼントを自信なく差し出したりしたことでわかるようにめちゃくちゃ考え込んじゃう人だからね。丁寧故に繊細なのは読者も知るところ。


 ただそんなふうにある種カッコつけてる谷に対して鈴木が、これがまあとっても愛おしい顔を向けるんですよ。

 

集英社 阿賀沢紅茶 [第50話]正反対な君と僕 より

 

 

 きゃわ〜〜〜〜〜〜!


 実際のところこの時の鈴木はいたずらをしてたわけなので、谷の真意にどこまで気づいてたかってのはぼかされております。全部察した上で(見えを張っているところが)可愛いなのかもしれないし、単純に自分を想った言動をしてくれた谷への愛おしさ爆発なのかもしれません。いたずらしてたわけだし後者が有力ではある。


 でもなんというか、自分を安心させるために見栄を張って言葉をかけてくれた谷への鈴木の感想が「かっこいい」じゃなくて「かわいい」なのが、ああこの二人なら大丈夫! って思わせてくれる気がします。


 お互いが良いところで見えを張り合うのではなく、優しさをもってお互いをありのまま認めあってる感じ。相手を大きく捉えすぎず等身大で尊重し合う関係性。それってすごく長続きしそうじゃないですか。


 これまでの話ではあんまり進路とか将来みたいな話って深々書かれることはなかったわけですが、3年生編からはそのへんもみんなの関係性を描く上で欠かせないファクターになっていくのだと思います。


 その中で鈴木も谷も揺れたりするんだと思いますが、それでも二人なら……二人なら大丈夫……と外野に信じさせてくれる回だったと思います。


 こういう温かみのある回も素敵でしたね。

 

 そんな感じで、次回に続く!

 

 

 

[逆転裁判456王泥喜セレクション]ネタバレあり感想⑦ 5-特別編「逆転の帰還」

 

前回

 

 

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 4に多かった派手な要素の多いシナリオと、3までの丁寧な人間ドラマのハイブリッドって感じがする完成度の高いシナリオだと思いました。

 

 ミステリーとして二転三転する前提や、意外な真犯人など気持ちのいい裏切りが多く、最後まで勢いよく楽しませてくれつつも、動物を通して各登場人物の魅力が浮かび上がるドラマにほろりとさせられる。隙のない構成でしたね。

 

 

 やっぱり今回はみんな登場人物が魅力的だったと思います。基本的に悪役がいなくて、各々が各々の信念とか譲れないものがあって、あくまでその中のすれ違いが起きてしまっただけという。

 

 水族館組は基本的に動物を大切にしているし、作家の浦鳥さんも真実に対しては誠実だったし、真犯人も恋人の復讐をたくらみつつも船長に対してはきちんとリスペクトがありましたからね。

 

 だれも悪くはないけど悲しい事件が起こってしまうという意味では2-3の「逆転サーカス」に近いものがありました。あちら以上に希望をあふれた終わりを迎えましたが。

 

 個人的には終始にこやかに立ち振る舞いつつエールに寄り添う気持ちを貫いたショーコはお気に入りのキャラになりました。モーションも豊かだし。地味に絶対領域がセクシーだし。

 

可愛い

 

 あとガクさんもよかったですね。ぶきっちょだけど人は良くて知的で有能。怪しそう~な雰囲気がいい意味でミステリーをかき乱してくれましたし(犯人だと思ってました)。実際は彼のもたらしてくれた情報でわかったことも多いのでめっちゃ助かる存在でしたね。

 

キャラデザはこの人。故人なのが悲しい……。

 

 

 ミステリーも面白い。「シャチが被告人」という飛び道具から始まるのだけれど殺害方法→殺害場所の違い→狙っていた相手の違い、とどんどん真実に迫るごとに前提条件がひっくり返っていって、目まぐるしく変わる状況を追いかけていくだけでもすごく面白かったです。

 

 しかもミステリーを読み得ごとに水族館の裏側の部分がどんどんわかるようになっていて、登場人物たちの掘り下げも兼ねているっていうのがまたすごかったですね。この人物はこう考えるはずだから、事実もこうなるはずだ! とロジックを詰めていく様はめちゃくちゃやりがいがありました。

 

 ま、難易度自体はヒントが多くてかなり易化はしてると思いますけどね。とはいえ、ここまで暴いたのにまだ食らいつくか! みたいな瞬間が多くて楽しかったですよ。

 

 

 はみちゃんが出てきたり、ようやく復活したカガク捜査があったりと細かい見どころも多かったです。やっぱりカガク捜査はいいね。逆転裁判の探偵パートで一番楽しいよ。

 

証拠品クルクルも復活してくれ~

 

 なにより、魅力的な人間たちのドラマを見せつつ、最後は過ちから社会復帰したイクヤが再び海賊たちに迎え入れられてる姿があって、それが一度過ちによって弁護士バッジを失いつつも帰ってきた成歩堂の姿とも重なるようで素晴らしかった。

 

こういう場面、実は逆転裁判では貴重?

 

 

 構成〇、キャラ〇、後味〇でかなり隙のない話だったと思います。

 これが特別編ってすごいね。後半のエピソードもこれくらい楽しいといいなあ。

 

 では、逆転裁判5-3でまたお会いしましょう。ほなまた。

 

 

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逆転裁判4 ネタバレあり感想 〜大魔術の裏に置き去りにされたもの〜



 

 

【前書き】

 

 お疲れ様です。ネクサス系統です。

 

 先日より遊んでいる逆転裁判456王泥喜セレクションのうち、逆転裁判4をすべてクリアしたので統括感想をこちらに書いていきたいと思います。

 

 意欲的な要素がかなり盛り込まれた、「新章開廷」らしい意欲的な作品でした。ただ、それが全てうまい感じに行っていたのかというと……?

 

 そんな逆転裁判4の感想について述べていきたいと思います。

 

(エピソードごとの感想も書いておりますので、そちらもどうぞ)

 

 

 

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【点数】

 

6/10点

 

 

 

【短評】

 

ゲーム面・演出面に優れているが、キャラ描写・シナリオ構成に粗の多い佳作。

 

 

 

【良いところ】

 

・探偵パートを単純にさせない科学捜査

 

 蘇る逆転で部分採用されていた科学捜査パートが本作では全編通して採用されていましたが、これが話を単調にしない良い要素だと思いました。

 

 単純に旧作と比べて情報の出る幅が広がっていますし、話を聞いて移動して……よ単調になりがちな探偵パートにミニゲーム的な遊び方を提供してくれたのも楽しかったです。

 

 4話の毒の検出なんかはまさかの驚きもあって、推理だけではたどり着けない要素を出してくれる演出としては◯。

 

 シナリオ、ゲーム面、両方にいい影響を与えている要素でした。

 

 

 

・映像などの演出面

 

 アニメーションムービーの採用や、登場人物の動き方がかなり進化していたのが印象的です。イントロのムービーは毎回事件への緊張感を高めてくれましたし、裁判中のモーションも多種多様で見ているだけでおおとなるとところ多かったです。

 

 また、3話では映像を使った証拠品を出すなど進化した演出をきちんと遊びの幅につなげていたところも楽しかったですね。

 

 逆転裁判4は、こういうゲーム面での手触りが良くて好きです。

 

 

・BGM

 

 旧作の熱さを残しつつ、新章開廷の雰囲気のあるシュッとしたBGMが物語を盛り上げてくれていたと思います。

 

 特にお気に入りはじんわりとした熱さが広がるような「王泥喜法介 〜新章開廷!」とシリーズおなじみの「追求 〜追い詰めないと」です。

 

 

 

・キャラクター

 

 不満点もありますが、新規キャラクターの何人かは比較的気に入りました。

 

 特に牙流検事は旧作の検事と比べると「真実」に重きを置いており、王泥喜に対しても倒すべき相手というより共闘相手的な風に見ていたような気がします。王泥喜たちをライブに呼んだりと個人的な交流もありますし、今までにない感じの雰囲気でしたが概ねその人間性自体は好きでした。

 

 あとみぬきちゃんのキャラデザが好きです。

 

 

 

・フックの多いストーリー

 

 今作はストーリー構成が旧作と比べてもかなり捻っている部分が多くて、それが強烈にこっちの興味を引いてくるような構成になっています。

 

 被告人成歩堂からはじまりまさかの犯人が浮かび上がる1話、小さな意味不明な事件がどんどんつながっていく2話、音に映像に見立て殺人まである3話、裁判員裁判に過去の因縁が絡み合う4話。

 

 特にどのエピソードも風呂敷を開いていく瞬間が楽しくて、イベントも多く高い濃度を保ったまま進んでいくのはやりごたえがありました。

 

 この導入が面白かっただけに……みたいなところもありますけども。

 

 

 

【うーんなところ】

 

・人物の掘り下げが少ない

 

 全体的に共通して言えることとして、話を進めることに注力した結果なのかキャラクターの掘り下げが全体的に足りないと思います。これがかなり色んなところに悪影響をもたらしていると思いました。

 

 まず主人公の王泥喜くんですが、弁護士を志すに至った動機等個人的な掘り下げがかなり少ないです。これは初代の成歩堂くんが御剣の話を絡めつつ動機をきちんと描いていたのとは対照的です。

 

 バックボーン自体は4話で明かされるのですが、結局のところ本人がそれを知ることがなく、細かい経緯も明かされないのでなんとなくのキャラクター性しか伝わってこないのがもったいないと思います。

 

 シナリオの要所を他のキャラクターの活躍に席を譲ってしまっているところももったいないですね。

 

 他の各話のゲストキャラクターのシーンも少ないことが多く、特に被告人の話が足りないことが多いのがかなりもったいないと思います。

 

 暴力団だの別の犯罪をしている人だのただでさえ訳ありな被告人が多い中でその掘り下げがある程度されたのが4話くらいなもんですから、アクの強い彼らに感情移入したり「助けたい!」と思わせるだけの要素が不足しているように感じてしまいました。

 

 というか全体的に今作は良くも悪くも登場人物の癖が強く、ちょっと倫理観的にも怪しい行動をする人物がかなり多いです。その上で人物描写が少ないのでとっつきにくい・好きになりにくい人が続出しまくっています。

 

 ドラマに感情移入するうえで、これは大きな問題だと感じました。

 

 

 

・爽快感不足な構成

 

 これは特に3話と4話の話になりますが、謎解き部分自体は結構力が入っていて面白い部分もあるものの肝心の真犯人の追い詰め方が煮え切らないものなので、爽快感が足りないと感じました。

 

 追い詰め方が「状況を利用して証拠だけでは立証できなかった犯人を追い詰める」という形なので、どうもこう回りくどいんですよね。

 

 もちろんその問い詰め方をしなければならない、というのがシナリオで説明されていることは重々承知なんですが、その周辺の話がきちんとされていないこともあってなんかもやもやしたまま終わったように思えちゃうんですよねえ……。

 

 

 

・描写不足感の目立つシナリオ

 

 そもそも論として本作は、大きな説明不足だったり違和感がある描写がかなり多いのも没入感をそぐ要素だと思いました。

 

 わかりやすいところで言うと3話の「銃の反動」についてとか過去編の「その辺でもらった証拠を突きつけてしまう成歩堂」とか、納得のいく説明がされなかったり流れに違和感のある描写が多くて、本作がやろうとしていたシナリオをちゃんと出力しきれていないように感じます。

 

 一つ一つの事件が繋がって、大きな一つの真実につながる……という構成自体は面白かったんですけどね。

 

 それを100%見せたい形で見せれたかというと、違うのかなと思います。

 

 

 

【総評】

 

 演出面の進化や調査パート・裁判パートそれぞれでできることが増加したことになどにより、遊びの幅が増えゲームとしては確実に進歩している作品だと思います。BGMも新章開廷にふさわしい新しい風を感じるもので、作品開始時の盛り上がりは十分すぎるくらい面白かったです。4話すべてが連続性を持っていること、各エピソードに今までにないシチュエーションをぶっこむところなど、意外性を軸にした構成も挑戦的でした。

 

 ただ通しで見た時にはやっぱりシナリオ面で気になるところが多すぎて、諸手を上げて称賛するのは難しいですねえ……。もう少し全体的にやりたいシナリオに対して描写のバランスの取れた作りになってくれれば、何かが変わったかもしれません。

 

 やろうとしていたことは面白かったが、それを表現しきれなかった惜しい作品……といったところでしょうか。

 

 愛せる作品だっただけにもったいなかった。惜しいなあ。

 

 それでは、次回は逆転裁判5の総評でお会いしましょう。

 

 

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