時空を超える「これすき」

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映画「最強のふたり」 ネタバレあり感想 〜新たな人生の楽しみ方〜

 

 

 

 

 


【前書き】

 

 当たり前のことではありますが、世の中には自分の知らないことが溢れています。

 大抵の物事は自分の人生に関わることはなく終わっていき、人はきっと世界の1割も理解することなく人生を終えていくことでしょう。しかしそれは未知故の無能から絶望する理由になるわけではなく、むしろ自分が一歩踏み出すだけで知らないことをたくさん知ることができるという希望があるということです。

 だからこそ人は知らないものを知りに行くほうがいいですし、知らないものに触れたときにできるだけ素直に受け止めてみるべきだと思うのです。

 ということで、今回は自分と正反対な映画を通して、自分の世界が広がる瞬間のすばらしさを感じていきたいと思います。

 今回感想を述べるのは、友人から薦められた日本最大ヒットフランス映画、「最強のふたり」です。

 

 

 

最強のふたり (字幕版)

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  • フランソワ・クリュゼ
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【点数】

 

8.5/10点

 

 

 

【短評】

 

圧倒的な映像表現と音楽、それに乗せられた下品で爽やかな友情が眩しい良作。

 

 

 

【良いところ】

 

・映像と音楽の抜群の美しさ

 

 本作の最大の見どころはなんといってもこれでしょう。

 全編通して本作はセリフで物語を語るより、音楽と映像で感じさせるような場面が多いのですが、このシーンがどちらかといえばシンプルなストーリーラインを大きく盛り上げています。

 10年以上前の映画と言われないと気づかないくらい映像は綺麗ですし、BGMは切ないシーンはより切なく、賑やかなシーンはより楽しそうに盛り上げてくれます。

 登場人物たちの感情の揺れ動きをパワーあふれる映像表現で壮大に盛り上げることで、シンプルなシナリオをより深く、より確実にこちらの心に刺さるようにしています。

 特にお気に入りのシーンはアース・ウインド&ファイアーの曲に乗せてパーティ会場で皆を巻き込み踊るシーン。

 上品な空気がドリスの影響で一気にクラブのように愉快な空間に変わる瞬間の気持ちよさは随一。フィリップの住んでる世界の見え方を変えてしまったドリスのパワーを感じるシーンでした。

 

 

・コミカルでぶっ飛んだ友情の楽しさ

 

 今回のストーリーの軸はドリスとフィリップの友情関係となりますが、ここも非常に良い。

 ドリスはスラム出身ということもあり言動は無茶苦茶で誰かにブチギレられてもおかしくないような言葉を連発します。しかしそれ故の素直さがありフィリップに対しても他の人と変わらないノリで接していく。これが、周囲に障害者としての扱われ方に辟易していたフィリップにいい感じにハマっていくんですよね。

 仲を深めていくと、フィリップの障害者として見られることへの強さだったり、実は意外とぶっ飛んでる趣味方面だったりと彼の厳格な資産家というだけではない一面が見えてきます。そうやって打ち解けたドリスと二人でブラックジョークを言いながら、ゲラゲラと楽しそうに笑うシーンはどこにでもいるような馬鹿な男たちそのもので、二人の間にある違いなんて何一つ感じさせません。

 このお互いがお互いを受け入れ合うユニークな友情は、今作の持つ雰囲気の魅力にダイレクトに繋がる素晴らしい要素でした。

 

 

・愉快で愛せるキャラクターたち

 

 前述した通りフィリップは厳格なだけでなく意外と下世話な部分も持ち合わせています。ドリスと意外と馬鹿話で盛り上がるのはなんだか可愛らしい。気が強そうに見えて自身の身体への繊細な感覚を持ち、それ故に苦悩することもある。それでもドリスに背中を押されながら少しずつ変わっていく姿はとても魅力的。

 ドリスはドリスで粗雑に見えて任されたことになんだかんだ向き合うし他者にもきちんと手を伸ばす懐の深いところがあります。直情的な性格も素直さからくるものと考えれば影響でしょう。アウトラインを飛び越えまくるブラックジョークも、もはや後半になれば味です。

 サブキャラクターも一挙一動がユニークな人が多くて、終始賑やかな作風に一役買ってくれる名優たちばかりでした。

 

 

・言葉以上に雄弁な演技

 

 演技もめちゃくちゃ引き込まれました。特にフィリップの首から下が動けないというキャラクター故いろいろと難しいことも多いと思うのですが、感情の揺れ動きが表情一つから伝わってきて素晴らしい。瞳を見るだけで、百の言葉を尽くすより雄弁に感情を語ってくれます。

 逆に動きまくるドリスは見ているだけで愉快。でもふとした瞬間にのぞかせる表所が彼のやさしさだった李をじんわりとにじませていて、途中からどこかカッコよくすら思える。

 名優がいてこそ名キャラクターあり、と強く感じさせてくれます。

 

 

・始まりを予感させるさわやかなクライマックス

 

 そしてそんな2人の物語はドリスが弟のためにフィリップのもとから離れることでクライマックスへ。

 フィリップの元での生活の影響を受け、品が身についたりウィットにとんだ話ができるようになったドリスは、新しい場所で人生を前向きに進めていきます。

 けれどフィリップは一歩前に戻ってしまい、また触れられざる障害を持つ者になってしますが……そんなフィリップをドリスは再び連れ出して、そして彼に文通相手に無理やり出合わせる。

 このシーン、ただ粋でかっこいいというだけではなくドリスが「フィリップが次に進むために必要なこと」だと考えての行動なんじゃないかと思います。

 二人で無邪気に過ごした時間が終わり、それぞれの人生へと道は分かれていく。けれどお互いがお互いに残したものが、次なる人生の糧となる。2人で最強で最高だった2人が、一人でも最高の人生へ――というさわやかな旅立ちは、穏やかなエンディングテーマとともに希望にあふれたさわやかな気持ちにさせてくれるベストシーンだと思います。

 あの瞬間の言いようのない晴れやかな気分が、この映画を見てよかったと思える何よりの根拠ですね。

 

 

【うーんなところ】

 

・ラスト

 

 雰囲気が最高で構築されているので文句らしい文句はないのですが、しいて言うのであればラストの元ネタの2人の映像を差し込むのはちょっとだけ没入を削ぐ行為だと思いました。

 原作へのリスペクト的なことだとは思うんですけどね。

 

 

【総評】

 

 言ってしまうと本作はかなりシンプルな構成の話で、シナリオ的に大きな起伏となる場面はあんまりありません。構成要素も2人の友情にかなり寄っていて、決して目新しいわけではない。

 けれど、目を惹く映像と目が覚めるような音楽、名優たちの演技が合わさるとそのシンプルなお話を何重にも奥深く楽しめるのだということを学びました。

 まさにこれぞ映画の力、というパワーを感じる名作、楽しませていただきました。ありがとうございました。

 

 ほんと、人生って素敵ですね。

 

 

 

映画「スパイラル:ソウ オールリセット」 ネタバレあり感想 〜闇の中の真実はソウでもない〜

 

過去の感想

 

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【前書き】

 

 こんにちは。最近ソウシリーズが少しアマプラに入ってきているようです。

 

 

 確認したところ3,4,5でした。中途半端すぎないか……?


 シリーズを1から見る、というのはまたもう少し余力があるときじゃないと行けないみたいです。仕方ないですね。

 

 こういう時は手ごろな作品で一発欲を発散するのがいいでしょう。


 ということで今回は、ソウシリーズのリセット作、スパイラル:ソウ オールリセットを見ていこうと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【点数】

 

4.5/10.0点

 

 

 

【短評】


ゴア描写と刑事ミステリーが衝突事故を起こしてどっちつかずになってしまった作品。

 

 

 

【良いところ】


・テンポが良い

 

 本作の作劇で唯一明確に褒められるところはテンポの良さでしょうか。90分と短めな本編にいろんな事件をギュギュッと詰め込んでるのでイベントが尽きず、常に何かしらは画面内で起こっている感じにはなっています。


 どんどん状況が悪化していく中でなんとなく焦燥感をもたせる、という部分は割と成功していたんじゃないでしょうか。


 後半ちょっと失速した感は否めませんが……。

 

 

 

・刑事ドラマとしての最低限度の要素が揃っている

 

 色々とドラマの要素に不満はあるのですが、刑事ドラマとして最低限は揃っているのでまあ見れないことはないです。


 爪弾きにされてる皮肉屋なようで根は熱血の刑事と、シュッとした柔そうな新人のバディというのはまあありふれてはいますが独特の軽口もあって悪くはないですし、犯人から届く小包から見えてくる思想とか、それに対する調査の進め方とか、前述のテンポの良さもあって結構のめりこめはするんですよね。


 冷静に考えるとん? となるとこもあるんですが、イベント目まぐるしさのおかげであんまり気にしなくて住んだというのもあります。

 

 

 

・軽快な台詞回し

 

 全体的に台詞回しは楽しかったと思います。主演のクリスロックは向こうでは有名なコメディアンと聞きますが、その影響があるのでしょうか。皮肉たっぷりに感情を乗せるジークの言動は楽しいものがありました。

 

 

 

【うーんなところ】


・全体的な描写不足感

 とにかく本作は薄い。イベントは多いんですけど、そのイベントを印象付けるための布石が少なくて全体的に薄味なんですよね。


 本作のシナリオは「腐敗した警察に対して」、「それに憎悪を抱く犯人が」、「ジグソウの模倣犯として残酷なゲームを仕掛ける」というのがメインだと思うんですけど、この全部がまあ物足りない。


 警察の腐敗は言葉の上では何度も強調されますけど、具体的な部分はゲーム前の犯人のゲーム説明でちょっと出るくらい。それをした人間側の掘り下げも皆無だからふーんって感じになっちゃうというか。


 犯人側の憎悪もそもそもパーソナリティの掘り下げが薄い。父親を殺したやつを恨むとかならまだわかるけどそこから組織憎しに至るまでの過程がちょっと飛んでるせいで狂気的な事件を起こすまでの導線が足りてない気がする。


 そして上記のせいで、ジグソウの模倣であるゲームがちょっと滑ってしまっている。端的に言うと「なんでそこまですんの……?」って話。


 この薄さはキャラクターにおいてもそうです。


 ジークと親父の関係はそもそも親父が出てくる時間が短すぎて犯人の思想との比較が弱い。ジーク本人も割とオーソドックスなキャラ付けなので、なんというか嫌悪感とかはないけどあんまり印象に残らなくて……。


 その他人物は言うまでもなく、全体的に薄味。


 これがこの作品の一番微妙だなあと感じた部分です。

 

 

 

・完全にPVとかしたゲームシーン

 

 上記で「ジグソウのようなゲームを仕掛ける必然性がない」と話しましたが、その上で今作のゲームは生存方法がほぼ死に直結するものばっかりでほぼ殺戮ショーになっちゃってるんですよね。


 おまけに本作はゲームの参加者ではなくゲームを調査する刑事視点で進むもんだから、ゲームシーンがほぼ被害者演出でしかない。


 要は物語的な意味合いが薄いというか。その尺別のシーンに使ったら? と思えてしまうのがもったいないなと感じました。

 

 

 

・オチの弱さと黒幕の魅力不足

 

 本作は黒幕は複数のミスリードをしながらぼかされていくんですが、後半でそのミスリードが一気にしまわれていってしまうので最後の方ではもう黒幕候補が残ってないんですよね。


 だから「実は俺が犯人だ」と出てこられてもあんまり衝撃感がなかったです。そしてそこからネタばらしとして犯人の背景があれこれ出てきますが尺と見せ方の問題かあんまり耳に入らず。


 ソウはクライマックスに注力してる作品だと認識してましたけど、本作はちと弱かったです。


 ラストも嫌な気持ちになるだけで、今後になにかつながるわけでもないですしね。黒幕はほぼ情報を出し切ってしまったので、続編を出されてもなぁ……と。

 

 

 

・SAWとしての要素は必要だったのか?

 

 本作はオールリセットと銘打たれていますが、実際はソウシリーズを意識した演出がそこらかこに散らばっています。豚のマスク、小型テレビからのゲーム説明、PLAY MEと書かれたカセット、豚、ジグソウの名前、ノコギリ……。


 そしてそのどれもが物語的な意味を持ちませんでした。せいぜい「ジグソウの模倣犯」であることの意味付けくらいですがそもそも黒幕が「ジグソウを模倣した」ことの意味合いがうすすぎて、ただこの作品を「ソウ」っぽくするためだけの要素になってはいないでしょうか?

 

 

 

・吹き替え

 

 吹き替え版で見たんですけど、犯人の声の加工が弱いのかめちゃめちゃ声で黒幕わかっちゃいそうでした。

 

 

 

【総評】

 

 なんだか色々言ってしまいましたが、個人的にはそんなに嫌いな作品ではありませんしなんならちょっと好きです。導入の部分はかなりワクワクするものでしたし、中盤くらいまでなら70点くらい上げてもいいかのと思っています。


 ただやっぱりどうしても後半の弱さや全体的な物足りなさを補うことは難しく、点数をつけてしまうとちょっと辛めになってしまうかなあ、という印象です。


 ソウシリーズとしてではなく一つのミステリーとして見れば見ごたえもあるかもしれませんが、それでもやはり後半の失速感は辛いものがあります。


 要素要素は面白そうだっただけに、それを活かせなかったのが惜しい作品……といったところですね。

 

 

 

 

 

正反対な君と僕 第52話『んなわけ』 ネタバレあり感想

 

前回の感想

 

 

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 ん〜〜〜〜〜〜最高です!

 

 

 

 今回は新学期突入からのクラス分け発表回。やはりというか、レギュラーメンバーが一つのクラスに固まったりしないのがとってもこの作品らしい。


 あーみんなばらばらになっちゃうのかさみしいな……とこちらに思わせてから、そこに対して揺れる東が描かれていく回でした。

 

 ちょっと前に自分の中にある気持ちの種を自覚した東ですが、平との関係のような「積み重ねていく」関係には不慣れなようで、いちいち平に対する振る舞い方が気になってしまっている様子。前もそうでしたが、感情の揺れが表情に出る東の見たことない顔がまたかわいいんだなコレが。


 一挙一動に平を気にするところが出ちゃってる感じがたまらんのですよ。鈴木とか西は割とオーバーに出てくるタイプだけど、東は人にバレない程度に実は……みたいな感じで差し込まれてくる。最初のファミレスにしたって、なんとなく平の隣の席に座るか考える→バイト上がりを思い出し匂いをさり気なく確認しながら山田の隣へ、というこのくだりだけでもお腹いっぱいですよ。ええ。


 そんな些細なことでいっぱいになりつつ、平への気持ちを考える東。関係性を大切にしたいからフラットに友達でいる時間を大事にしたいけど、相手の特別でいないのは悔しい……という複雑な気持ちになってしまう。それを幼稚だと言えてしまう大人っぽさがあるがゆえにまたモヤモヤモヤ。平と会えないと寂しく感じると気持ちを素直に認めればそれで終わりな気もするけども、良くないと感じる気持ちを向けたくもないんだろうね。平と比べると経験豊富な東も相手のことを考えすぎて結果平くらいモヤモヤしちゃうってのもまた面白いところ。


 でもそんな東に対して、また平の素直な言葉が刺さるのよね。

 

 

 

 

 



 平にとって東とこうして過ごす時間が当たり前のものという認識があって、そのことが「自分との時間を特別に感じてくれてる」と感じて舞い上がる東。そんなわけ無いでしょと理性で抑えつつ、身体は正直るんるんステップ。浮かれた様子がまた可愛らしくてねぇ〜〜〜〜〜。


 環境の変化に合わせて、少しずつ自分の気持の正体を探っていう東がキラキラしてる、そんなキレイなエピソードでした。


 小さいながらも変化を積み重ねていく、それがこの漫画の良いところですね。


 この辺でそろそろ、平からの東の見え方の話も見たくなってきたなあ。

 

 

 その他小話。


 マイナーソング歌おうの会、単行本であった小ネタですね。谷くんと付き合う前の鈴木の一幕が見れるのでオススメ。


 クラス分けは概ね3分割。メインカップル3組は全員別のクラスになりました。1組に東とサト、7組は鈴木山田にカワサキとモリモ(名前を思い出せなくて調べてしまった。すまんモリモ)、8組に谷平西ホンちゃん。今まであんまり絡みのなかったキャラ同士の絡みも増えそうで気になります。


 とはいえクラスが分かれることはラブコメ的にはマイナス? 既に付き合っている二人はともかくタイラズマにはどう影響するのやら。


 離れたがゆえに触れようとする二人の姿を通して、距離を縮めていく、そんな未来に期待しつつまた2週間後ヘ……ん?

 

 

 そんな………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

集英社 阿賀沢紅茶 [第52話]正反対な君と僕

 

舞台「PSYCHO-PASS Virtue and Vice 3」 ネタバレあり感想 〜九泉の正義が導く最期〜

 

 

 


【前書き】

 

 こんばんは。

 別に誰に言うこともないのですが、PSYCHO-PASSシリーズが好きです。

 

 もともと親の影響の海外のミステリーを見ることがあったのですが、PSYCHO-PASSはそういう作品に近い空気を感じるのが好きでした。

 

 その中でも特にお気に入りなのが舞台作品のVV。特にVV1はシリーズ通しても一番すごいんじゃないか……と思うくらいの作品です。

 

 そして最近、その続編がやってきました。VV1から繋がるVVシリーズの最終章。

 

 PSYCHO-PASS VV3です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


【点数】

 

7.5/10.0点

 

 

 

【短評】


物足りなさはあるが、九泉の完結編としてはやり切ったと思える作品。

 

 

 

【良いところ】


・九泉関連

 

 なにはともあれ、久しぶりに九泉を見れたという事実が嬉しい作品。シビュラの記憶加工の影響もあって不安定さとか脆い部分とかを強調されることは多かったものの、癖はあるがやり手の監視官という味わいは変わらずだったのがとても良かったです。


 また今作では「本当こ九泉とはどういう人間だったのか?」という部分に掘り下げが入ると共に、九泉という人間の最期を描くのが大きな山場になっていました。ここらへんは物悲しくはあったけどかなり満足です。


 正義感の強さ故に犯してしまった間違いを正しく裁かれずにいた九泉が、自らの正義感を下に自らの罪を裁く……というのはシビュラ社会において「確固たる自分」を貫いた終わりとしてしんどい、けど味のあるものだったんじゃないでしょうか。


 最期の朱ちゃん「ある意味では彼はシビュラに勝ったと言える」という言葉、あれが全てだったと思います。

 

 

 

・1っぽいノリが復活していた

 

 vv1のいいところの一つに海外刑事ドラマっぽいスピーディーな展開と謎解き要素があったと思います。今作は完全にとは言わないにしてもかなりノリがその時に近くなっていたのが良かったと思います。会話劇で自然にキャラクターの良さを引き出しつつ、事件の展開がテンポ良く進行していく。そこに哲学的なロジックをひとつまみ。そうそう俺の好きなPSYCHO-PASSvvはこれだよ! と思えましたね。

 

 

 

・その他演出面

 

 アクションは流石といったところ。個人的にはあの金髪にーちゃんが信じられないくらい飛んでんのが面白すぎて爆笑してた。お前そんな動いてええんか。
 その他シビュラシステムの人間ではないことへの描写をライトでするところとか、はっとするシーンが多くて緊迫感がありましたね。

 

 

 

【うーんなところ】


・キャラの掘り下げが物足りない

 

 構成自体は1に近いものでありつつ、そこにシビュラ側の思考とか九泉の過去の掘り下げがガッツリ入る関係で新しい三係の掘り下げは結構不足していたと思います。特に海堂が人工監視官だったという設定は余計だったようにも思える。シナリオ的には驚きをくれる要素ではあるんだけど、1で九泉と対比になってた火納と違って個性が丸かぶりだから薄れちゃってるんですよね。「九泉が誰かに自分の後釜を託す」というのはいいけれど、その相手として海堂を選ぶのならもうちょっとそうしたくなるキャラだったら良かったなあと思います。

 

 

 

・印象が薄くなった悪役

 

 今回、黒幕の「イリュージオ」関連がかなりキャラ立ちをしてたなとは思うんだけど、いまいちそれがシナリオの面白さにつながっていなかったような気がする。過激な行動とその背景にある絶望がちょっと乖離している気がするっていうのもあるし(そこに説得力を与えきれてない?)、最終的に話がシビュラと自分に終着するからどこまで言っても中ボス……なんだよな。


 ちょっと勿体無かったと感じます。

 

 

 

【総評】

 

 ちょっと色々詰め込め過ぎを感じる作品ではありましたし、粗いところは隅々に感じたりするものの、vvシリーズの流れを踏まえてきちんと九泉晴人の物語として結末を迎えてくれたことには結構満足しています。


 作られた存在を通してシビュラ社会における人間らしさとは何かを描くこのvvシリーズ。その完結編として本作は役割を果たしてくれたと言えるでしょう。


 九泉晴人という人間を気に入ったものとして、ここまで見れてよかったと思います。


 ありがとうございました。PSYCHO-PASSシリーズのこれからの発展に期待します。

 

 


おまけ


歴代PSYCHO-PASSシリーズの個人的な評価

 

1期 8.0点


2期 7.0点


劇場版 7.5点


SS1 8.0点


SS2 7.0点


SS3 7.3点


3期 5.0点


3期FI 7.5点


劇場版P 8.5点


VV1 9.0点


VV2 5.0点

 

 

©舞台「サイコパス3」製作委員会

映画「CUBE 一度入ったら、最後」 ネタバレあり感想 〜無機質さとドラマティックのアンチシナジー〜

 

 

 

【前書き】

 

 ウォッチパーティがサービス終了してしまうというお知らせに涙を流している皆さん、こんにちは。


 我々オタクという得た感情を発散しないことには息ができないマグロにとって、リモートで感情を分かち合う手段であったウォッチパーティが奪われてしまうのはまるで足を失うようなものかもしれません。


 そんなわけで、この機能の追悼も兼ねて友人を数名集めて、名作映画と言われており前々から気になっていた「CUBE」を見ようと思います。

 

 

 

 

 アマプラで見られませんでした。


 仕方ないので日本版を見ようと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【点数】

 

5.0/10.0点

 

 

 

【短評】


題材の掛け算を盛大にミスっているが、テーマを貫きまとまってはいる佳作。

 

 

 

【良いところ】

 

・テーマが一貫されていた

 

 本作は複数の登場人物が登場するワンシチュエーションのホラーものになります。その中で不穏とか疑心暗鬼とかが話のメインに来そうなものですが、話のメインテーマはかなり明瞭に絞って描かれていました。


 それは、CUBEをつらい現実に置き換えての「現実との戦い」というものです。


 弟を追い詰めて自殺の最期のトリガーを引かせてしまった後藤が、弟と似た境遇の千陽との交流を通してあの時できなかった「手を伸ばす」ということをし、未来に繋ぐ。それによって助けられた千陽が前を向いて、現実と向き合い直す覚悟を決める……というのがメインのシナリオだったわけですが、このシナリオを見せるための要素は概ね揃っていたと思います。


 やりたいことが明瞭で、そこに向かって真っ直ぐ話が進んでいたため薄味ではありますが消化不良感はあんまり感じませんでした。ラストのちょっと爽やかな余韻からの星野源の主題歌が流れるエンドロールは、(好みは分かれそうですけど)やりたいことをきちんと貫いている気がして好感触です。

 

 

・テンポが良い

 

 人間ドラマを核にしてるのでデスゲーム的なテンポは良くなさそうなんですが、立ち上げが終わったあとはキャラの掘り下げと謎解きシーンがテンポ良く交互に進むので退屈で眠くなるようなことはありませんでした。


 掘り下げる点と掘り下げない点の取得選択がはっきりしてて、物語として贅肉になりそうなところをうまく切り落としてたのが良かったんだと思います。


 謎解き部分とかは割と合理性もありましたね。これ自体は原作ベースなのかな。

 

 

 

岡田将生の怪演

 

 あんまり演者についてどうこういうことはないんですが、岡田将生さんの豹変演技はすごかった。あんまり俳優詳しくないけど、この人はすごいイメージある。
 リーガル・ハイとかでも思ったんですけど、この人普通そうな人が豹変していく様を演じるのがウマすぎる気がする。
 最近ラストマイルって映画でメインキャラで出るらしい事も知ったのでそこも結構楽しみにしてます。
 個人的にはシーンが切り替わったら笑顔で背景に溶け込んでたところが好き。

 

 

 

【うーんなところ】


・CUBEという舞台と人間ドラマの噛み合いが悪い

 

 個人的にCUBEという世界観の見どころって無機質さだと思います。ちょっと綺麗さまである機械的な空間から命もなんも考えてないようなひどい罠が飛んでくる、という人の命をいじめるための冷徹なシステム、という感じ。


 でもこの舞台設定と信頼とか未来への希望見たいな前を向く人間ドラマがあんまり噛み合ってない気がするんですよね。命が淡々と刈り取られていく空間で、一つの命の感情を強く描きまくっても仕方ないというか。


 実際ドラマを深堀りするためにトラウマ映像再生とかいうオカルティック過ぎるトラップもありましたし。いやまあなんか、テクノロジー的にはできるのかもだけど。

 

 

・緊張感不足

 

 この映画107分なんですが、最初に人が死ぬのは(オープニングを除くと)物語が折り返したあとです。


 これはねえ、遅い。遅いです。


 いやまあ演出意図はわかるんです。ドラマチックに倒れましたから。この人の死を印象付けさせないといけない場面なんだ! というのはわかります。


 ただ、そういうドラマの深さと連動するシーンでしか人を殺さないと「それ以外の危機」がちょっと薄くなっちゃうと思うんです。だから自分は後半まであんまりドキドキしなかったんだと思いますね。


 この作品、25分地点くらいでひとり死ぬだけで相当緊迫感が違ったんじゃないかな。

 

 

・その他ツッコミどころ

 

 描写規制の関係かかなりグロ表現がチープです。


 あと会社役員の人はキャラがぶれてた気がします。

 

 

 

【総評】

 

 前評判的に全然期待しないで見た作品なんですが、そこそこ纏まってたなあと心から思います。いや傑作ではないし色々チープではあるんですが、見れる。そしてやりたいことも割とできています。


 ウォッチパーティしながら見ましたが、皆割と「思っていたよりは……」みたいな反応をしてましたね。まあ期待値下げてたからこそ許せたって感じですが。


 この作品への感想は「中身が何も無いパッケージ詐欺の弁当」が出てくると思ってたら「量はそこそこで主催副菜ごはんがそろってるけど味が薄い弁当」が出てきてまあコレくらいならいいか、というだけであって、別に褒め立てるつもりも特にないです。


 でも視聴後の味わいが悪くないのは本当なので、まあこんな時間もありかなくらいで思っておこうと思います。


 ではまた。