時空を超える「これすき」

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映画「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 〈ワルプルギスの廻天〉」ネタバレあり感想 ~行かないでって言いたくて~

 

 

 

 

【点数】

 

6.5/10.0 点

 

【短評】

 

叛逆を多角的に捉えなおしたシナリオは面白みもあるが、作品としてはちょっとむず痒いところも残る作品。

 

【詳細な感想】

 

 

 前作叛逆の物語から13年越しの続編となった本作。私はリアタイ勢ではないですがそれでも初見から7,8年は経っているので随分と懐かしい作品だなと思って見に行きました。ネタバレを喰らう前に早めに味わいたかったというのもありますね。

 

 私にとってまどかマギカはTV版も劇場版も違った意味での傑作であり、特に劇場版叛逆物語は作品としての完成度の高さに衝撃的な展開についていけない心でありながら物語としての美しさに屈服させられてしまっておりました。

 そういう経緯もあって、もはやこの作品は記憶の中の神話生物みたいなものだったのですのでハードルは上がりきっていたわけですね。

 

 その上で本作ワルプルギスの廻天についての感想を述べると、まあ……ぼちぼち……といったところ。面白いところ、考えがいのある所はなくはないものの作品単体としてのパンチ力という意味ではちょっと物足りないところもあったかなと思います。

 

 最初にネガティブなところを述べると、全体的にシナリオがちょっと間延びしているような気がしました。あまり前作との比較ばかりするのもよくないんですが、叛逆の物語って物語へ引き込む力がすごく強かったんですよ。TVシリーズで実現しなかった平和な時間から違和感に気づき不穏が漂ったり、マミのTV版のイメージをひっくり返す戦闘があったかと思ったらさやかが意味深で、そこから怒涛の開示からの衝撃的なラストへ――と、伏せられている情報を開示しながらシナリオのうねりを何度も作っていくのが上手かったんですよ。

 それで言うと本作はシナリオの要素の回収がかなり単調に見えてしまったなと思います。トカゲ電話はあくまでほむらの企みとしてあっさり明かされてしまうし、新規3人娘がどこから来たのか? というのも早めに開示されます(個別の掘下げは別として)。作中のキャラが驚いたりするところでも叛逆ラストで失われた部分を元に戻していくような部分が多くて、新規3人の開示ターンが回ってくるまでの展開はちょっと個人的には退屈でした。映像面はすごい凝ってるんですけどね。音響とかも含め映画館で見る意義は大きかったなと思います。

 ただその分、設定を深堀して物語に新しい視点をもたらしてるのは悪くないかもなと思いました。例えば新キャラついてインキュベーターを肯定する魔法少女がいたり、ワルプルギスの夜と魔女の設定を広げてまどかとは違う意味で魔法少女の救済したい魔法少女を提示したり、既存の設定の余白をうまく活かしてました。ワルプルギスの夜の真実とかかなり面白いなと思いました。

 

 その上で本作は、改めてこれまでの話で語られてきたことを問いかけなおすようなシナリオになっていました。なんというのでしょう、内省的というんですかね。まどかが円環の理を生み出したことで救われたものは何だったのだろう? とか、ほむらはまどかのどういうところに救われたんだろう、とか。これまでの物語で示してきたことを振り返ったうえで、そこに改めて答えを出す物語だったのかなと。

 というか本作で見せられたことの全てが「こんなに頑張ったまどかが一人で全部責任背負わなきゃいけないの、悲しすぎない?」という主張にすべて集約されているといってもいいかもしれません。

 

 いうなれば本作はエゴの物語だったんだと思います。「君はどうしたい?」という魔法少女の起点である「願い」に立ち返る。そういった再生産をする話だったのかなと。

 TVシリーズではまどかの決断をほむらが受け入れる話を書いて、叛逆の物語ではほむらが自身のワガママを貫きました。ワルプルギスの廻天はそれらを踏まえて、ちゃんと対等に願いをぶつけ合いたかった……のかもしれません。なぎさのマインドセットが明かされたのも、さやかが最後にほむらの背中を押したのも、全ては2人がどうしたいのかという問いかけを台頭にぶつけるためだったのではないでしょうか。

 ほむらはまどかに行かないでほしい、ずっと一緒にいてほしい。まどかはその言葉を受け止めたうえで決断をしなければならない。対等に言葉を交わし決断する瞬間には、確かにカタルシスを感じました。

 ただ残念ながら本作では想いを伝えあった先は明かされませんでした。まどかはほむらとともにいることを選んだようでいて、でも映像は別れを示唆するようでもあり、2人が最後にどうなったのかはひどく曖昧なままです。もしかしたら続編の構想があるのかもしれませんが、正直ここは明確に示してほしかったというのが本音ですね。こんなにも対話の時間を焦らすんだったら答え合わせしてほしかったし、そうじゃないならもっとまどかとほむらの話し合いが見たかったです。

 

 新規キャラに尺を使った分既存キャラの扱いはイマイチなところがありました。叛逆の物語のようなifを用いた掘り下げがあったわけでもないですし、杏子とマミさんは割と戦闘要員だったと思います。さやかとほむらの因縁も正直もうちょっとがっつりやってほしかったですね。さやかがほむらの背中を押すという構図はいいと思うんですが、そう思うようになるまでをもう一ステップ刻んで描写してほしかったところ(メタ的に見れば熱いというのはわかります)。さやかの等身大に悩む描写は相変わらず感情移入しやすくていいんですけどね。

 なぎさのカラっとした価値観の提示は今作のテーマ性に合っていて良かったと思います。さやかの背中を押すところとかは本作がやりたいとこをかなり端的に表していたんじゃないかなと。

 

 色々書いていて思いましたが、結局のところ私はまどかとほむらの話が動く瞬間を見たかったのかもしれません。本作のラストで確かに彼女たちの距離は変わるのですが、そこまでの紆余曲折が非常に複雑で、ボルテージを上げきれないままラストに突入してしまった感覚がありました。

 一個一個の設定は面白かったとしても、それ自体がメインの話を作れているか・面白さにつなげられているかは別の話だと思います。取り扱ったテーマは確かに面白い物でしたが、それが面白い作品として出力されていたのかというと……個人的にはあんまりそうは感じなかったのかなと。

 

【最後に】

 

 

 ということでワルプルギスの廻天でした。

 13年ぶりの新作というハードルを越えられた作品なのかというと頷けないところもあるのですが、見せようとしてきたこと自体は割と好意的に受け止められたと思います。そういう実ではちゃんと見てよかったと思います。

 とはいえスッキリ終わっていない部分があるのも事実なわけですが……続くんですかね。これ。そこだけはちょっと明確に示してほしいなあ、と思ったりしています。

 ともあれお疲れ様でした。ありがとうございました。

 

 

 

おまけ 昔Xに乗せたまどマギの感想リンク(リプに続く)

 

 

 

 

 

 

 

©Magica Quartet/Aniplex,Madoka Project

 

映画「リズと青い鳥」ネタバレあり感想 〜そこに空があるから〜 

 

 

リズと青い鳥

 

 

【点数】

8.5/10.0 点

 

【短評】

2期の補完としても素晴らしい作品でありながら、瞬間の切り取り方に感心してしまう良作。

 

【詳細な感想】

 

 一言で言うと「好みでない作品の中で一番胸に響いた作品」という感じになるでしょうか。少女2人が主人公、劇的な出来事よりも日常の深掘り多め、柔らかく繊細なタッチの絵、どこをとっても自分の趣味とまるで違うのに、それでも見終わったときに得も言われぬ情動を感じました。淡い作品に見えてすごく力強い作品であったようにも感じます。

 

 とにかくまず小さな描写の積み重ねに圧倒されました。まずオープニングで希美とみぞれの朝練を経てタイトルが出てくるまでに10分弱かかってます。正気じゃない尺の割振りなんですが、その分この細かいシーンにいろんな心の揺れ動きが詰まっていてすでに只者じゃないオーラを出していました。みぞれ先輩の視線やリアクションだけで2人の距離を見せているのは素晴らしいなと思います。

 作品全体は静かなトーンで動きの少なめな作品ではあるんですが、その分キャラクターの心の揺れ動きをきちんとすくい上げていてこの時間の積み重ね方はなかなか見れるものじゃないなと思いました。

 

 シナリオとしては2期の補完として非常に優れていたと思います。

 外に向かって自分の意志で飛び立つ意志を決めたみぞれも好きなんですが、やはり自分がリズと似ていると認めた希美がすごく好きですね。彼女とみぞれの関係は2期時点だとみぞれ側の感情が大きくて希美側がどこか鈍感に思えていたんですけども、本作では希美自身すら自覚のなかった嫉妬だったりの黒い感情に向き合うことになりました。元々感情的になりやすいところがあったと思いますが本作の気持ちの吐露はいままでよりもかなり重々しいものになっていて、みぞれに本音を伝えるところではかなり苦い想いが滲んでいたなと思いました。自分の友達が音楽において自分が手にできないものを手に入れられる人であると素直に受け止めるのは、すごく難しいことでしょう。

 ただ、この苦い想いを自覚し吐露することにこそこの作品の本質があるのだと思います。希美とみぞれはずっと同じ時間を過ごしていたようでその実どちらも目線が重なっていませんでした。みぞれは希美を上に見すぎているし、希美はみぞれと自分が違う場所にいるということを認められなかった。それを時間をかけて認めることで彼女たちはようやく対等な関係になれたのだと思います。

 本作は二人の立場の違いを認め、いつか来る別れを受け入れることで未来を選択する結末となります。それは2人の道が交わらないという事実を示すものになりますが、だからこそ2人は「今」同じ場所に立っていることを愛おしく思い大切にしようとするのでしょう。

 流れる時間の中の小さな揺れ動きを一つ一つ拾う作品になっていたからこそ、ラストの重なっていられる今を愛おしく思う気持ちをより盛り上げているように思えました。なんならむしろこの結論があったからこそ作品全体がこの結論がきちんと伝わるように作っているのだと思います。

 2期から描かれてきた彼女たちの関係性の結論として、この上ないものであったといえるでしょう。

 

 サブキャラの動かし方も良かったと思います。優子先輩や麗奈の好き勝手言う組のスカッとする言動も面白かったですし、新キャラの剣崎後輩の人の好さも癒しになっていました。本来の主人公がめっちゃ影薄いのもそれはそれで。

 

 あとは演奏シーンはある意味で今までで一番良かったのかもしれませんね。あくまで合奏練習という地味な舞台であるものの、みぞれの圧倒的な表現力をアニメーションで表現されていたと思います。希美が現状を受け止めるためにここの場面には説得力が必要だと思うのですが、まさに次元の違う演奏だったなと思いましたね。

 

【最後に】

 

 2人のキャラクターに焦点を絞り、大きなイベントではなく日常シーンでの積み重ねを重視し……というものすごい「静」の作品として作られている本作ですが、だからこそみぞれと希美の2人が自分の心の中に向き合って未来に向けて選択する過程が説得力を持って描かれていたと思います。

 こんな風にアニメーションで描くことができるんだなと感心させられました。ありがとうございました。

 

映画「君のクイズ」ネタバレあり感想 〜問われ続ける日々を生きて〜

 

 

 

【点数】

8.5/10.0点

 

【短評】

クイズとの向き合い方をシナリオ・映像両方で映画化した意外な良作。

 

【詳細な感想】

 

 見に行ったのは完全に自分がQuizKnockのファンだからというだけの記念受験みたいなものなのですが、ただ見てみると色々なところに感心できて思いのほか面白かったなと思いました。

 

 一番いいなと思ったのは映像面でした。クイズプレイヤーが自分の中にある答えを探す過程を映像表現で視覚的に見えるカタチで魅せる、ということができていたのにはとても驚きました。競技クイズの話をチラホラは聞いたことあるな〜くらいの人間なのでやり方とかセオリーみたいなものはなんとなく知っていたので、それをあんなに面白い形で映像になっていたのは感心してしまいました。静かで緊迫感のあるミステリーを期待していたのでこんな角度から驚かされるとは思わなかったです。

 しかもこの自分のなかにあるはずの答えを探す過程というものがきちんと本筋にも合流する要素になっていて、ただかっこいい演出というわけでもないのが無駄がないですよね。プレイヤーの感覚が本質に気づくきっかけになるというのはよくできています。

 

 シナリオに関しては、リアルタイム性が高くて緊迫感のある作品になっていたなと思いました。冒頭から基本的に間の少ない連続した流れのなかで続いていきますし、番組収録が始まってからは常にその収録に立ち会っているような緊迫感があったと思います。おかげでかなり空気感にのめり込めました。

 そしてその上できちんとクイズというものが持つ性質をシナリオに組み込んでいるのが良かったですね。クイズと向き合うということはどういうことなのか? というのがシナリオの根幹になっていて、だからこそ主人公が真実に到れる流れに説得力が伴っていました。

 断片的に挿入される主人公の過去も、後半になるにつれて主人公の過去そのものが議題となっているクイズ大会の真の姿にしっかり繋がっていっていました。過去そのものを切り取って問題として集めたクイズがあって、その中で謎の奥にある人間性に触れる。そして最後に2人だけが互いに触れ合う……というのは面白い流れだったと思います。

 

 問いかけ続けることが人生だ、という最後の結論も落としどころとして納得感がありますが、ミステリーとしてのリアルタイム性の強い演出と過去を踏まえて今を考えるという流れの噛み合わせがちょっと悪く思ってるよりはズシンと響かなかったかなあという気もしました。もうちょいとだけ主人公の人柄が見える場面があったら嬉しかったかもですね。

 

【最後に】

 

 シナリオの流れや謎解きの部分にクイズを重ねて行くだけでなく、映像面でもクイズの面白みが出ていたのが意外で思いのほか楽しめる作品だったなと思います。ミステリーは静かな作品になりやすいので中盤ちょっと頑張らないといけないこともあるのですが、本作はそんなこともなく楽しめました。

 面白かったです。ありがとうございました。

映画「ひつじ探偵団」ネタバレあり感想 〜忘れるな、この痛み。〜

 

ひつじ探偵団

ひつじ探偵団

  • ヒュー・ジャックマン
Amazon

 

 

【点数】

9.2/10.0 点

 

【短評】

ポップなアニマルコメディと万人に通ずる道徳的なお話を併せ持つ良作。

 

【詳細な感想】

 

 予告編を見た時にはコミカルなジョークっぽい海外映画というくらいの印象でしたが、世間の評判がいいので見に行ってみると大変驚かされました。

 コミカルな印象はそのままありつつも、根っこには万人に通ずる道徳的なお話が潜んでいて、しかもちゃんとミステリーとしても楽しめるとても丁寧な作品だったと思います。暖かみのある児童文学のような作品でした。

 

 とにもかくにも良かったのがメインシナリオとそのテーマ性でした。物語の中でしか死を知らず、辛いことを簡単に忘れ去ることができる羊たちが飼い主の死を経験するなかで「辛いことから目を背けて忘れて生きていくのはいいのだろうか」と考えていく。この痛みとの向き合い方がしっかりと描かれていたのがとても印象にのこっています。

 特に丁寧だったのが最も利口なひつじであるリリーが自分の常識を覆されて、いろいろな価値観に触れていく中で考え方を変えていく過程です。羊にとってのあたりまえを最も忠実に守っていた彼女が、セバスチャンのシビアな考えと対立したりモップルが一人で覚えていた痛みに触れたり冬っ子ちゃんと向き合ってみたり、自分が抱えていた偏見を少しずつ紐解きながらどうすればいいのかを考えていく過程が良くてできていました。

 羊たちのキャラクターもたっていて、特にモップルも鈍感なふりを続けながら静かに痛みに耐え続けていたという経歴には思わず胸を撃たれました。吹替えで見ましたがチョーさんの静かな語りがとても染みます。

 ベースの価値観を描きつつ、それが経験によって変わっていく流れがしっかりと描かれれていました。ラストも消失の寂しさを抱えながらもそれを抱えて未来に向かって生きていこうとする姿が人とひつじの間で共有できているような感覚があって、それがどこかさわやかな未来を想像させてくれる終わりになっていました。正直かなりグッときましたね。

 

 また、人間パート・ミステリーパートもよかったと思います。最後の追い詰める家庭だけちょっと説得力が弱いと思いますが、基本に忠実な論理の積み重ねを行いつつも幾重にも重なったミスリードをひっくり返して意外性のある結末が待っているのはシンプルに楽しいあらすじになっていたと思います。個人的に警官のキャラも愛嬌があっていいなと思っていて、なんだかんだヘタレが支えを受けて最後の最後に頑張るというのはすごく嬉しい展開でした。

 あとはやっぱりジョージですかね。登場がめちゃ多いわけじゃないのですがきちんと羊たちの考え方の核になっているのがわかりますし、存在感がしっかりとありました。セバスチャンを助け出した下りとかかっこよすぎて何の作品はわからなくなりましたね。

 

 総じて、ポップで軽快なミステリーとして楽しめつつも根っこにあるまじめなテーマがしっかりと染み入る丁寧で素晴らしい作品でした。

 

【最後に】

 

 こういう作品が思わぬところから降ってくるからこそ映画館に行くのはやめられないですね。たまに帰って来たい、そんな風に思える作品になっていたと思います。

 これからもこんな作品に出会えることを祈っていきます。ありがとうございました。

アニメ「響け!ユーフォニアム 第二期」全話ミニ感想+全体感想 ~黄前久美子の特別なもの~

過去の感想

 

 

honngyoup.hatenadiary.jp

 

 

 

 

 

 

【全話感想】

 

第一回 まなつのファンファーレ

1期の終わりからのダイレクトな続き。関西大会に抜けたことで意思の形がはっきりしてきたようで部の空気も1期と比べても全然違いますね。地味に葉月の練習成果が出てきたりと前向きな要素盛りだくさん。麗奈と葉月・サファイアの関係性も生まれ始めたのは、麗奈がみんなの思いにきちんと向き合ったうえで特別になろうとする意思の表れなのかもしれませんね。久美子も誘ったりと前向きな変化だらけ。後今回は久美子の緩んだ口調が特に楽しかったです。素の彼女がだいぶ見えてきてるってことかも。

そんな爽やかな流れのなかでフィーチャーされることになったのは2年生。無口できれいなみぞれ先輩と、部活に復帰したい希美先輩にあすか先輩も絡んでギクシャクとした人間関係が見え隠れしております。

爽やかな夏の深まりと、その裏にあるちょっと怖さが見え隠れする2期の始まりとなりました。

 

第二回 とまどいフルート

夏のプールでの華やかな休日の裏にあるジメジメした後悔が見え隠れするエピソードでした。なんか希美先輩の言動一個一個が生々しくてすごい嫌な汗をかいちゃいました。感情の整理がつかなくて溢れ出しちゃうところとか見るのきついですね。水着回ではしゃぐどころじゃないっす。

2年生との交流の中で南中面子の過去が見え隠れしつつ、そこに気をヤキモキさせる久美子。感情の整理をつけられず後悔してる希美先輩に感情移入しているようにも思えました。過去の思い残しに向き合って進んだというのは1期の久美子も同じでしたしね。

じんわりとした湿度の癒しは愛に振り回される高坂麗奈だけです。頼んだぞ。

 

第三回 なやめるノクターン

悩みは深みを増すばかり。でも目指す場所の兆しもまたキラリ、といったところ。

みぞれ先輩のかつての親友への恐れとか、滝先生の過去とか、複雑な2年生の心理模様とか、まとまりきらないいろんな交錯を久美子視点で追いかける流れでしたね。みぞれ先輩は直接気持ちを語ったのは前回くらいではあったものの、色々なところでその本心が見え隠します。コンクールへの気持ちが向けきれない理由はそりゃもちろん希美先輩なんでしょうが、でもどうすればいいのやら。あすか先輩もなんだかまだまだ見せてくれない姿がありそうですし。

でも優子先輩のマインドはスカッとしてて救われましたね。ブレない気持ちと正しさを認める勇気を持つかっちょいいまとまり方をしていました。なんだかんだ前と比べると強くなったということなんでしょう。

 

第四回 めざめるオーボエ

氷解の回。みぞれ先輩の本音の吐露と希美先輩との和解が描かれました。

希美先輩の鈍さもさることながら、殻にこもってどうにも吐き出せない思いをグルグルしてたみぞれ先輩にも「おい!!!」って感じでなんともヤキモキする回でした。感動というよりも「それでいいんだよ!!!」と焚き付けたくなるような。優子先輩が吠えた瞬間の今その言葉が必要なんだ!!! という気持ちがすごかったです。素直に気持ちを吐き出せる優子先輩の強さに救われましたね。

相手と自分の非対称な眼差しにやきもきするみぞれ先輩にはかなりドキリとさせられました。分かりますこういう気持ち。でも蓋を開けてみたら希美先輩みたいに良かれと思ってみたいなパターンも割とあるもんなんですよね。それもまた分かります。

希美先輩は希美先輩で、自分のしたことがみぞれ先輩に大きな影響を与えてるなんて思わないもんだからまたややこしくなるんですよ。鈍感たちめ! 振り回されたのは周りだぞ! 希美先輩は自分の行動の意味を認識しろ!

とはいえ、仲直りできてよかったですね。夏紀先輩や優子先輩の尽力も報われるというものです。久美子も気を揉んでいたし。

あすか先輩、自分の中では聡明ゆえに他者と一線引いてる臆病な人って認識なんですがどうなんでしょうね。久美子はまだその輪郭をつかめていなさそうです。

 

第五回 きせきのハーモニー

関西大会編もクライマックス。全国へ向けての大一番です。節々の部員同士の会話がアチィ。

小細工抜きの長回し演奏パートのアニメーションが力強くてすごかったですね。この作品のトロの部分ではありますが、2期もまだ中盤だというのにここまでやってくれるとは。雄弁に語るようなみぞれ先輩のソロパートとか、麗奈のソロパートで改めて彼女の眩しさを感じる久美子とか、印象的なカットも多かったです。あとこの回見て打楽器操る女子ってかっけぇなって思いました。

余韻を残したままダイレクトにエンディングに飛び込む構成は完璧です。Cパートで全国行きを確定させてくる後味への配慮も優しい。

このアニメとしては一つの完璧を叩き出した感じがありました。素晴らしかった。

 

第六回 あめふりコンダクター

ユーフォ特有の前半後半で寒暖差のデカいお話でした。

前半の文化祭パートではやっぱり葉月や希美先輩も含めて皆で演奏してるところにぐっときましたね。来年また新入部員増えてからだとコンサートメンバーにはいるの簡単じゃないとは思いますけど頑張ってほしい……。

上級生達の微笑ましい姿も見れて久々に秀一もやってきてと賑やかな前半でしたが、後半は雨に振られる久美子と滝先生の話へ。久美子の姉への込み入った感情は1期から語られてはいますけど、終始断片的なものなんですよね。どこかで踏み込んだ話をするってことなんでしょうけど。

滝先生の奥さんの話を踏まえると、これまでの強い態度になんだか色々思いを馳せてしまいますね。未熟にも思えた激情に個人的なものがあったとなればまた見え方が変わります。

ラストはあすか先輩に忍び寄る……母親ですかね? 嵐を過ぎて覚悟は決まっても、平坦な道とはいかないのが大変だ。

 

第七回 えきびるコンサート

あすか先輩の家庭事情のエグみに胃がムカムカしてきました。母親の感情の出し方の迫力がもう見てられない……。

あすか先輩の進退に揺れる吹奏楽部が描かれていました。担ってきた役割は表に見えるものだけでも相当なものですし、みぞれ先輩の件みたいな水面下でコントロールしてきた部分も含めるとまあ相当なんでしょうね。部がぼろぼろになる理由も分からなくもないというか。

そんな窮地を支えるのが1期から必死に頑張ってきた部長なのが熱い。演奏パートのソロでは溢れ出る感情を叩きつけるような激しさがあって、ソロをやり切るぞ! という責任感が引いては自分が部活を引っ張っていくという決意に感じました。かっこよかったです。

 

第八回 かぜひきラプソディー

ここにきて久美子のとても個人的な部分、姉に関わるお話でした。姉もまたさぁ……なんというか、人生の揺らぎを突きつけられるのは見てるこっちもきつい。半端に隠して、見ないようにして、ごまかしてきた感情が溢れたってことなんですかね。ガチ姉妹喧嘩はかなり……うん。

幼少期久美子の素直さが微笑ましかったですが、そこからだんだん利口になろうとして離れていく姉を見ていたのが今のちょっと擦り切れた久美子になった要因だったんだなと改めて思いました。もともとは姉と演奏したいという素直な憧れだったというと、実は麗奈に似ていたのかも。なんなら麗奈に感じている憧れは、かつて姉に向けていたものに近かったり?

まあともかく、姉にとって遠ざけていた音楽はただの通り過ぎた思い出の一つだったのかもしれませんが、久美子がいたからこそその時の大切だった想いを思い出せたのかもしれません。それが何だと言われたら、悲しいだけの過去じゃなくてよかった、というだけなのかもしれませんが。でもそれはお姉ちゃんが今と向き合うのに必要なことにも思えました。

 

第九回 ひびけ!ユーフォニアム

ここでタイトル回収、だと……? と思ったら、これはあすか先輩への言葉なのでしょう。

あすか先輩のお家訪問回。家の大きさに驚いたなと思っていたら明らかになるあすか先輩の過去話。そしてそこに切り込む久美子という構図のエピソードでした。切り詰めなければそこにいることすら許されなかったという思いの吐露は、いつもの軽口でも誤魔化せないくらい深刻でしね。

父親への想いと全国で会いたいという欲求がこれまでの一貫性のなさそうな先輩の立ち回りの裏側にあったと。本人は自虐していたものの、人並みの欲とずる賢さが見えたことでようやくあすか先輩の人となりを感じられたような気がします。それは久美子も同じようで、演奏者としてのあすか先輩への憧れを吠えていましたね。かつて辞めていくのを止められなかった、姉への憧れをあすか先輩に重ねているのでしょうか。

あすか先輩の周囲への冷たい眼差しは自分を理解なんてしてくれないだろうという諦めであるんでしょうが、同時にそれをわかっていて周りを利用としているずるい自分にも向けられていたのかもしれません。だからこそ、演奏者としても好感を抱いていてかつそれを踏み込んで言及してくれそうな久美子には話してくれたんでしょう。だとすれば奥底に触れたうえでそれでも好きだと言ってくれる久美子の言葉は彼女にとって大きかったんじゃないでしょうか。

滝先生に浮き足立つ高坂麗奈さんが可愛かったですね。

 

第十回 ほうかごオブリガート

完璧でした。本当に素晴らしかったです。2クール分積み重ねてきたエピソードの重みが熱のこもった演技と共に弾けてスパークする最高の回でした。

あすか先輩への周囲への「自分のことを理解できるわけがない」みたいな苛つきは、いつからか「こんなずるい自分のことを受け入れてくれる人なんていない」みたいな自信のなさなっていた……前回の感想で述べた部分がクリティカルだったようです。それが明言され、久美子に対しても一線を引いたうえで、それを久美子が個人の感情で乗り越えるというのはなんとすごいカタルシスでしょうか。ありのままの自分の醜さを晒したうえで一緒にコンクールに出たいとあんなに情熱的に伝えてくれる後輩がいてくれるなんて、この上なく嬉しかったことでしょう。

そして久美子自身もまた、姉とあったかもしれない未来に思いを馳せて、怖がりながらも震えながらも声を振り絞るというね。あの久美子が叫ぶ一連のセリフはアニメーションと演技の組み合わせで過去最高に胸に響きました。こんなにも個人的な感情を叩きつける久美子が見れるなんて……。

久美子のお話として完璧でした。ありがとうございます。

しかしこのままコンクール行ってもよさそうなんですが、なんか高坂麗奈さんが……?

 

第十一回 はつこいトランペット

吹っ切れたあすか先輩がお調子者っぽくなくなるのが憑き物が取れた感じでなんとも嬉しかったです。

高坂麗奈が滝先生への恋心に整理をつけるまでのお話でした。元々強く感情が出ることの多い彼女ですが、うっかり知ってしまった滝先生の奥さんの話で相当荒れてしまっていたようです。感情の向けどころがなくて演奏がブレるどころか、久美子にも素っ気なくなり終いには怒りをぶつけるなどもうすごいことに。それほど強く熱中できるのは彼女の真っ直ぐさと表裏一体であるので納得はできますけどね。

最終的には滝先生に直接奥さんのことを聞いたりお墓のことを調べたりととんでも行動力を発揮しつつもちゃんと今自分がやりたいこともできることに折り合いをつけるのはすごいことかもしれません。納得できるまでやり切るのが彼女の強みですね。どこまでも伸びるようなトランペットの音色にもそれが表れていたと思いました。

 

第十二回 さいごのコンクール

なんかここにきて当たり前のように決戦前夜ムーブをしてくる秀一の幼馴染力に感心しました。2期かなり影薄かったのに。

ついに訪れた決戦ですが、目指していた栄光には1歩も2歩も遠かったようです。演奏はあえて流さないし、今の精算と未来への1歩を確かめることが主となっていましたね。悔しいなあ。

それでも満足感があるのは2期の後半で繰り広げられてきたあすかと久美子のお話にきちんと答えが出たからだと思います。父親に認められたあすかにも、姉への想いをようやく言葉にできた久美子にも、よかったなぁとしみじみとした感情を抱いています。久美子が自分の感情をあんなにまっすぐ伝えられる日が来るとは。変化ですね。

個人的にあすか先輩が香織先輩と部長をカフェに誘うところも好きでした。ようやく対等な目線の友人として見れるようになったんだなと。あと事前には覚悟決まってる声かけをするけど終わったら大泣きする部長も好き。

あと今回思ったのが、サファイアって毎回芯食ったことは言ってるんだなと……本筋には絡まないけど……。

 

第十三回 はるさきエピローグ

2期完結。学園モノらしい王道のお別れでした。

新部長はまあ言われてみたらそのとおりだし、副部長もまあそうかと言われれば……そうかもしれません。ここからの1年はさぞ賑やかな日々になることでしょうね。

お別れのトピックは色々ありますし、演奏シーンも印象深いところは多いです。でもやっぱり特筆するべきは久美子とあすかの最後のシーン。演奏者としての尊敬と人としての薄情さを2クールかけてずっと見つめてきて、そしてお別れとなった時改めてあすか先輩への気持ちがまとまったのでしょうね。そして、それを伝えなければ後悔になってしまうということも彼女は理解していました。

好きじゃなかったところも含めて今は大好きだという気持ちがビシビシ伝わってくる素晴らしい場面だったと思います。あすか先輩への憧れと彼女の後悔のため、久美子はこれからも頑張っていくのだろう……そんな風に未来に思いを馳せてしまいました。

シーズン通して久美子とあすかの描き方が素晴らしく、特濃の人間ドラマに何度も心を動かされました。ありがとうございました。

 

 

【点数】

9.0/10.0 点

 

 

【短評】

黄前久美子の大きな一歩を中心に個々人の成長を描いた良作。

 

【詳細な感想】

 

 1期とはまた違う意味で面白いシーズンだったと思います。

 1期の感想の際は構成の丁寧さと組織と個人の話の接続という丁寧さが好印象でしたが、2期は逆にとことん個人にフォーカスしたことによる感情的な盛り上がりが素晴らしいシーズンでした。

 

 2期を語るうえで欠かすことができないのはやはり久美子とあすか先輩のお話です。極論2期はあすか先輩の掘下げと彼女の心に向き合う久美子が最初から最後まで軸になっていました。この一連の心の揺れ動きの描き方に関しては全く文句がありません。100点満点だと思います。

 希美先輩とみぞれ先輩のすれ違いを描くことで伝えることの必要性を説き、久美子の姉妹の話を描くことで彼女にとっての音楽の意味を問いかけなおし、あすか先輩の家庭事情を姉の話と重ね合わせたうえでそれでもと久美子が踏み込む。1期も含めてずーっと久美子がぐるぐると考えてきた感情が最後の最後に爆発した瞬間の得も言われぬ感情は筆舌に尽くしがたいです。積み重ねの力が活きている素晴らしい構成でした。

 

 個人にフォーカスした話が多い分、要所要所のシーンの感動もひときわ強くなっています。心を曝け出しあった久美子とあすか先輩はもちろんのこと、すれ違いながらも最後に本音をぶつけ合うみぞれ先輩と希美先輩とか、責任ある立場の覚悟を示す部長とか、滝先生の真実に揺れる麗奈とか。

 元々ユーフォは個々人の地に足ついた心理描写をしている作品だったなと思いますし、その強さがよく出ていましたね。

 個人的には麗奈のことを吹っ切れた後周囲のために尽力する優子先輩が好きでした。みぞれ先輩にかけたまっすぐな言葉がとても印象的です。一期で見られた前のめりすぎる姿勢が、覚悟が伴うことで踏み込みにくいところに勇気をもって飛び込んでくれる気持ちのいいところに代わっていたのは見せ方が見事だなと。

 まあキャラも増えたうえで話が個人に寄ったので描かれる人とそうでない人の差が生まれたシーズンでもあるとは思います。2,3年生が中心になる時間が長かった分1年生の話は少なかったかなと。とはいえ短い場面で印象的なシーンを作れていたとは思いますよ。文化祭で演奏してる葉月を見てグッときましたしね。あと個人的には要所要所ですごくいいことだけ言うサファイアが妙にツボです。

 

 演奏シーンは相変わらず文句なしですね。名前も知らない生徒の演奏のカットですらその迫力につい見入ってしまいます。打楽器の描写が全体的に好みです。

 あとは個人的には駅ビルコンサートが良かったですね。覚悟の決まった部長のかっこいいまなざしと、ベースを悠々と弾いているサファイアがマジでカッコよかったと思います。

 

 総じて、構成の無駄のなさ・要素の配置の丁寧さみたいな機能美は話が膨らむ中で失われた部分が多いなと思った一方で、より深く・情熱的になった個人のストーリーはそれを補って余りある魅力を持っていたシーズンだったと思います。

 特に一期を踏まえた黄前久美子成長の章としては、ほぼ文句のないシナリオだったといえるでしょう。

 

【最後に】

 ということで二期でした。

 とにかく終盤のドラマが素晴らしいシーズンだったと思います。それでいて未来にもきちんと希望を託してくれる、とても後味のいいシーズンでした。

 なんだかんだで自分は人の感情の発露に弱いところがあって、そういう情緒が溢れそうな味わいをがっつり楽しめる力がある作品になっていましたね。

 面白かったです。ありがとうございました。