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劇場版 機動戦士ガンダムSEED FREEDOM ネタバレあり感想 ~20年越しの愛と現実の戦い~

劇場版『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』公式サイト

 

 

 

 

 

 

 

 

【前書き】

 

 機動戦士ガンダムSEED FREEDOMの話をする前に、まず自分にとってガンダムSEEDシリーズがどういう作品だったのかを話しておこうと思います。

 

 自分はSEEDシリーズのという作品のテーマは「残酷な現実と青臭い理想の戦い」だと思っています。ナチュラルとコーディネーターという生まれの違う人種による対立と、それによって起きた悲劇によって繰り返される戦争がある世界。その中で、キラたちがそれでも自分たちの信じるものを貫き戦うことで生まれる葛藤や苦しみ。それこそがSEEDという作品のテーマ性であり、「味」だと考えていました。

 

 そして私自身、このSEED味ともいうべき青臭さと非常な現実のコントラストが好きです。何度も何度も絶望的なほうに状況が転がっていって、懸命に生きている人々が何度も踏みにじられて行って、それでも最悪を避けるために戦おうとするキラたちの意思は尊いものだと思いますし、その葛藤を超えて立ち上がる姿にカタルシスを感じたことも一度や二度ではないです。

 

 ただ一方で、そのテーマは面白いと感じつつもそれをうまくエンタメ作品としての面白さに昇華できてない作品でもあると感じていました。これはなぜかというと、過酷な現実や残酷な悲劇を突きつけるだけ突き付けて、それに対するそれを否定する側の主張が「弱い」からだと思っています。

 

 いやまあしょうがないんですけどね。ナチュラルとコーディネーターの対立はあの世界はとんでもなく根深いもので、起こってしまった悲劇の数は数えきれないレベルです。それにコーディネーターの開発周りは本編で明かされたものだけでもとんでもない地雷が死ぬほど詰まっていて、一個問題を解決したところで無限に問題が出てきそうですし。それをキラやラクスたちの個人の思想で真っ向から否定して完全な解を出すのは無理ってもんだと思います。ただ、そのせいで物語の着地点がどうしてもふわっとしてしまって、「相手は倒したけれど、自分たちのやったことは正しかったのか?」というしこりが残る作品になってしまっていました。

 

 これが悪いことだとは個人的には思っていませんし、そのしこりが残ることも含めてSEEDだとも思っているのですが、ただやっぱりこう気持ちとしては見終わった後の感想はいいものにならない……んですよね。もうちょっと相手の思想に対する具体性のある答えが示されていたりしたら違うと思うんですけど。

 

 あとこれはまだ1作目のSEEDではよかったんですが、DESTINYはテーマの新規性が薄かった(デスティニープランは新しい対立項ではあったけど、そこに対する描写が足りてなかった)上、シンのようなかなりこう……描写の波にのまれてしまったというか、もうちょっとこう悲劇性以上の何かを描けなかったのかみたいな部分が多くて。全然嫌いな作品じゃないんですが、おもしろい作品というには難しい点が多かったと思っています。

 

 という感じでいろいろ複雑な感情を私はSEEDシリーズに抱えています。

 

 一言でまとめると「テーマ性は好きだけど作品としては難も多い」みたいな感じですかね。

 

 さて、そんな自分なのでこの劇場版を見るときは期待以上に不安の方が大きかった……と思います。

 

 あのDESTINYの続きが描かれてしまうのか。また苦しい、終わりがなく答えのない問いかけが返ってきてしまうのではないか。

 

 そんなことを考えながら見に行ったSEED FREEDOM。感想を以下に記します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【点数】

 

12/10点

 

 

 

 

【短評】

 

SEEDシリーズの描いてきたものを力強く肯定した怪作。

 

 

 

【良いところ】

 

・2時間に詰まった最後までたっぷりな「SEED味」

 

 まず何といっても本作は密度がすさまじいです。序盤の気合の入った戦闘から現状の地球の話、情報提供を受けに言ったら謎のSEED描写があって、キラとラクスの関係性の揺れからキラの暴走、そしてアークエンジェル勢力全滅……と、すさまじい勢いで話がぐんぐん進んでいきます。

 

 そしてその中に、今なおテロを仕掛けるやつらがいて(過酷な現実)、それに対してキラがデスティニープランを否定したことは正しかったのか? と悩む(理想とのギャップ)。それによってラクスが揺れ、そこに付け込まれて……という、「残酷な現実と青臭い理想の戦い」がぎゅっと詰め込まれてるんですよね。

 

 キャラクターもあの時の続きとしてみんな生き生きしてて、変わらない味付けを感じます。

 

 なんというか懐かしい風味をずっと感じられて、ああ今SEEDを見てる! と心の底から感じられてすげえよかったです。

 

 

 

・話の着地点をキラとラクスに絞ったことで生まれた答え

 

 本作は敵が「デスティニープランを実行するために生まれた存在」ということもあって、話の軸はDESTINYからの地続きになっていました。即ち「平等であるように作られた運命」と「自由に生きようとする意志」の対立です。DESTINYの時はここを「デスティニープランの是非」に直結させてしまっていたせいで、「大きな理想を個人の意思で否定する」というちょっと座りの悪い結末になってしまっていたんですが、本作はそれを改めて問いかけたうえで、話の軸をキラとラクスに寄せ「愛する人とともにいられない世界を否定する」という形で落としていました。

 

 これ。これが本当に良いと思ったんですよ。

 

 世界の現実を描写したうえで、キラやラクスという「個人」がどうするかを示す。これをすることでSEEDの「コズミックイラという争いの絶えない世界の話」から「キラやラクス、あるいはそこで生きている人々の話」に変えることに成功しているんです。これによって、作品としてしっかり「答え」を示す。

 

 これは本当に、すっごいことだと思います。

 

 だってこれまでさんざんこの作品は残酷な世界で生きる登場人物たちに「お前たちの生き方はそれでいいのか?」、「お前たちが選んだ選択は正しかったのか?」と問うだけ問うてきたんです。でも問いかけるだけで、決してその答え合わせはしてくれなかった。でもようやくこの劇場版は、キラたちの「こう生きる」という解を「それでいい」と認めてくれたんです。

 

 いや実際そういう話だったかは分からないんですけど、でも少なくとも自分はそう感じました。コズミックイラの非情さを何度も何度も何度も見せつけられてきたからこそ、その中で確かな答えを出したキラとラクスに、自分は強く心を打たれました。

 

 このテーマにまつわるまっすぐすぎる描写が、FREEDOMという映画の最高のうまみだと自分は感じています。

 

 

 

・突き抜けた青臭さと「愛」

 

 本作、序盤から結構恋愛絡みの描写が多いなと思っていましたが、後半を見て納得しました。本作の重要テーマがダイレクトに「愛」だったんですね。

 

 戦火の中でなに浮かれた話ずっとしてんだよ! と思わないこともないんですが、正直自分はこの愛の話がめちゃくちゃ気に入ってしまいました。

 

 だってめちゃくちゃわかりやすいじゃないですか。愛って。どんなに世界が平等だって、自分が愛した人と一緒にいられないなんて悲しい。素朴だしあまりにも主観的過ぎるけど、でもだからこそ絶対に譲れない気持ちがわかる。だからこそ素直に、心の底からキラたちを「頑張れ!」と応援できる。そんなSEED今までありましたか?

 

 ラクスを助けに行くシーンとか、クライマックスの愛を叫びながら戦うシーンとかはSEEDとは思えないさわやかさがあって、自分の熱い思いを吐露しながら戦う彼らがあまりにも眩しすぎて、まるで夢を見ているような気分になりました。

 

 正直今でもカプ厨の自分が見た妄想だったんじゃないか? と思わずにはいられません。それくらい意外性にあふれた、けれど最高のテーマだったと思います。

 

 

 

・テーマ性はそのまま極上のエンタメに仕上げた構成

 

 そしてこの「愛」という絶対正義の軸を一個定めたことで、この作品はギュウギュウに詰まった密度を保ったまますごいスピード感でラストまで突っ走っていきます。

 

 今まで見たいに葛藤するところがないんですよ。キラが「ラクスに会いたい」と決意したところからは、もう確固たる意志を貫き通すだけ。戦う中で苦悩して答えを探すSEEDはそこにはなく、各々が自分の望みをもってひたすらそれに向かって突き進んでいくだけ。

 

 SEEDの理想と現実のギャップという部分は外さないようにしつつも、あくまでそれに個人がどう立ち向かっていくのかを描くことによって厳しい世界にまっすぐ立ち向かっていく青臭さが前回に活きた作品に急に大化けしたんです。そんなことある?

 

 正直ほぼごり押しなんですけど、それでも作品自体のパワーで引っ張られてしまって、気づけばその愛の戦いに引き込まれちゃってるんです。すごいよこの作品。

 

 

 

・濃密なアクション

 

 SEEDってあんまりアクション作画がすごいイメージはないんですが、本作は20年越しの劇場作品ってこともあってもうとんでもない画面密度になってました。

 

 序盤の大混戦から中盤のアークエンジェルメンツが破れていく絶望感のある戦い、そしてクライマックスはMeteorを流しながらの大激戦。息もつかせぬアクロバティックなカメラワークの戦いがずっと続いて、瞬きできなくらい引き込まれました。

 

 しかもそれでいて、味方サイドに皆かっこいい瞬間があるのもまたいいですよね。

 

 今思うとSEEDで純粋に敵味方がはっきりしてる戦いでほとんどなかったので、こんなにしっかり見方が大活躍して終わる戦いってなかったな。そりゃこんなにわくわくできるか。

 

 

 

・シン

 

 本作はマジでキャラ描写も全部よかったんですが、あえて一つ取り上げるならやはり自分の好きなシンの話がしたい。

 

 話の軸がキラってこともあって本筋に大きくかかわってきたわけではないですが、代わりの後半のアクションはデスティニーに乗って大立ち回りを演じてました。

 

 デスティニー、本編だと立ち位置の関係で活躍としてはしょっぱいところも多かったですが、本作はそれをぶっ飛ばす大活躍でしたわ。

 

 もうちょっとあまりにも良すぎていいところを上げたらきりがないんですが、個人的に一番好きだったセリフは上げておきます。

 

 

 

「この間負けたのはジャスティスのせいだ! デスティニーなら……お前たちに負けるもんか!」

 

 

 

 キラがモビルスーツの性能が全てじゃないという中でのこれである。しかもこれで圧勝するんだから、シン・アスカという男は面白い。

 

 

 

【うーんなところ】

 

・各所のガバさ

 

 正直めちゃめちゃ面白かったので減点する理由もないが、冷静に考えるとガバいところも多い気がする。

 ブルーコスモスどうなったん? とか。

 

 でもいいか。面白かったし。

 

 

 

 

【総評】

 

 冷静に考えると結構ノリが無茶苦茶で、勢いで五里押されてるところも多分いっぱいあるんだと思います。

 

 でも自分はこの作品を見終わったときSEEDに感じていたいろんなもやもやが晴れていったのを感じました。それはこの作品が、SEEDという作品が描いてきたものを踏まえてそこで生きる登場人物たちを力強く肯定してくれてくれる作品だったからだと思います。

 

 これからもコズミックイラは争いは絶えないでしょうし、キラやラクスたちは戦いに巻き込まれるのでしょうが、その中で希望がある、愛があるとこの作品は教えてくれました。

 

 それだけでいいと今は思っています。

 

 今記事を見返すと、キラの本音を吐露するシーンがいいとか、アスランのやりたい放題っぷりが最高すぎるとか、なんで最後ヌーディストビーチしてたんだろとか大量に書き忘れたことがあると気づきましたが、なんかもうそれも込みで良しとしたいと思います。

 

 この2024年にこの続編を見れて幸せでした。ありがとうございました。

 

 

 

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