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映画「アイカツ! 10th STORY ~未来へのSTARWAY~」ネタバレあり感想 ~つまりこれは同窓会なんです。~



 

 

 同窓会ってあるじゃないですか。

 小学校でも中学校でも何でもいいんですが、あの時同じ学年っていうだけで集められていた雑多なメンバーがその縁でもう一回集まってみるあのイベントです。

 子供から大人になって見た目がガラッと変わってるやつもいればなんか面影が残ってるやつもいたり、昔と変わらないやつもいれば信じられないことを今やっているやつもいたり。

 あの日あの時いろんなことを知っていたけれど、時間の流れで変わったものと変わらないものを確かめて、ああ今こいつらってこんな感じなんだなってかみしめたりするあの時間。

 アイカツ10thに感じた感想は、その感覚に近いなって感じます。

 ああ、あいつらって今でもこんなに頑張ってるんだなーって、ちょっと元気をもらえる。そんなあったかい懐かしさと新しさのある映画でした。

 

 先に白状しておくと、僕はアイカツを見たのが2年前とかで結構にわかなんであんまりこのコンテンツと長い歴史を歩んでいるわけではないんですよ。だからリアルタイムで追いかけてきた人ほどこのコンテンツに熱量を持っているわけではないと思います。

 でもアイカツ本編で最初は弁当屋の娘だったいちごが立派なアイドルになって、そのバトンをあかりやほかのシリーズのアイドルへつないでいった一連を見ていくと、ああ彼女らは頑張ったんだなあって思い入れも少なからず生まれたりするわけで。

 特にオンパレードくらいになってくるともういちごたちはレジェンド枠みたいに見えてるんですよ。らきとかハナとか近年策の主人公と並んでるととんでもねえ先輩だ……って見えるのはもう仕方ないわけですし。

 だから、いちご世代の物語ってどこか思い出の中の作品になってたんですよね。彼女たちが作ったアイカツらしさはまだコンテンツに生きているけど、彼女たちは少し前のことというか。

 でも今回の10thは、最終回から地続きの話を描くことで「彼女たちの物語はまだ続いているんだよ」って教えてくれて。その結果、思い出の中の名作じゃなく「今」続いているコンテンツとしてのアイカツをもう一度作った……そんな風に感じました。

 

 物語の構成としては卒業ライブを決めるまでの3年生時期→卒業後の22歳となったいちご達→卒業ライブ本番、っていう過去と未来が入り混じる結構攻めた攻勢をしてたと思います。第1部に当たるライブを決めるとこまではプラネット映画の再編集版って感じだったんですが、改めて一連の流れとして見返すと結構印象が変わる感じがしました。プラネット映画はプラネットのほうがお祭り騒ぎのみで10thはぶつ切りだったので消化不良館ばっかり残る印象になってしまいましたが、10th単独で見ると必要な描写だったなあと思います。

 なんでかっていうと、悩むいちご・あおい・蘭を久々に見れたからなんです。

 さっきも言ったように、彼女たちはアイカツっていうコンテンツではすっかりもうレジェンド枠で、もう行っちゃえば敵なしのスーパースターポジションなわけなんですよ。当然後輩と絡めば彼女たちを導くポジションですし(そもそもあかりたちがいるわけですしね)、リアルライブとかでも扱いはおんなじだと思います。

 しかしあえて本作ではそんな彼女たちに「これからどうするのか」という命題を与えることで、改めてもう一度彼女たちを「ひたむきにアイカツに励み自分を磨いていく物語」に連れてきたんですよね。

 ただ、こういう展開は「きれいに終わった作品を掘り返して余計な悩みを持たせるのか」みたいになっちゃうこともあるのが記念作品ってやつですが、そこはアイカツらしく今は全力でやっているけどそれはそれとしてもっと先にはいきたい――というような前向きな形で提示したのもよかったと思います。

 そしてその悩みに各々が結論を出し違う道へ……というところでやってきた22歳パート。

 正直めっちゃびっくりしてました。「そこまですんの!?」という驚きがいっぱいです。

 10年経過した作品とは言えかつて学生としてキラキラしていたアイドルたちが各自の家に集まってはお酒を飲んでチーズをつまみにしながら旅行の話をしているんですよ。まさかべろべろに酔っぱらってマジモンのワインを飲みながららいちにちょっかいをかけるユリカ様を見ることになるとは……。アイカツらしい雰囲気こそ消えてないですけど、会話の内容は結構地に足ついたものだったと思います。

 背が伸びてシュッとしたらいちも含めて(めちゃ見た目もムーブもイケメンで超びっくりしてる。マジで何だったんだ?)、時間がこんなにも経ったのだなと感じさせる描写があの飲み会には詰まっていました。

 そして、そんな風に「時間とともに変わったもの」を見せることで、「時間がたっても変わらないもの」がはっきり浮かび出される展開となったのは本当に見事だったと思います。

 主演の舞台に真剣に取り組む蘭、学業に励み海外で努力するあおい、そして変わらずトップアイドルであるいちご。それぞれ背負う責任だったり課せられる課題だった李がより厳しくなってはいましたが、それでもなお自分が目指したい場所を目指して変わらず頑張っている彼女らの姿がそこにはありました。

 彼女たちは、昔のように何でも相談できるわけではなくなっています。それは、蘭の近くいるいちごであってもです(劇中で蘭の悩みに気づきながらも深くは触れないシーンがありました)。それほどまでに彼女たちが歩む道が今は違っているのです。

 でも彼女たちは、その道の間を無理に飛び越えようとはしません。らいちがいちごたちに「仕事の話をしないのか」という質問をしたのに対し巡り巡ってユリカが「信じているから」と答えたシーンがありました。

 そう、信じている。信じているから、大丈夫なんです。

 環境が変わっても、行く道が違くとも、彼女たちは互いを信じている。

 そんな風に、彼女たちは「今」頑張っている。

 それが示されると同時に物語は過去へと帰り卒業ライブのシーンへ。

 彼女たちが未来を選んだ思いが語られるソレイユのシーンへとつながっていきました。

 いちご、あおい、蘭の3人の思いがそれぞれ語られ、そして流れる「MY STAR WAY」。今でも彼女たちは、輝きのバトンの最前線で頑張り続けているのだと、強く教えてくれる暖かいライブシーンでした。

 そして、それからもう一度物語は未来に帰りソレイユの再開とともに物語は締めくくられます。

 あの日からまた何倍も素敵になった3人が出会って、また新たなソレイユが生まれる。そんな未来の夜明けがまぶしい印象的なラストシーンでした。

 今もなお、彼女たちは未来に向かって進んでいる。それを改めて知ることができるというのがこの10thという作品が生まれた意味なのだと感じました。

 

 アイカツはいちご世代からあかり世代への話を通して、あこがれは受け継がれていくものであるという結論を導き出した作品でした。美月からいちごへ、そしてあかりへ。それは無印のストーリー内で描かれた描写にとどまらず、作品を超えてアイカツが受け継がれていくことの比喩にもなっていきました。無印からスターズ、フレンズ、オンパレード、プラネット……作品が変わり、今が描かれるアイドルが変わり、そうしてアイカツが続いてきたのでしょう。

 けれど、あえて10thはもう一度いちご達の「今」を描きました。それは、輝きのバトンを渡した後も、彼女たちの物語は終わるわけではなく今もまだ続いていると教えてくれるようでした。作中のライブシーンに「君と向かう場所はどこだろう」という歌詞があるSignalizeを用いたのも、MY STAR WAYにSHINING LINEのメロディーが引用されているのも、おそらくは輝きを手渡した後の今を描こうという意思の表れなのではないかと思います。

 あくまでも本作はソレイユ3人の話なので、ほかのイチゴ世代の掘り下げはかなりムラがありますし、不満もそれなりにある作品ではあります。

 けれどそれを踏まえても、改めて今彼女たちが頑張っている姿を見せたうえでその先の未来をあの頃のように見せてくれたこの10thという作品は、まるで同窓会で今も頑張っているあいつを見つけた時のうれしさのような、そんなものを与えてくれる素敵な作品だったと思います。

 

 今、この作品に出合えて幸せでした。いつかまたいちごたちに出合える日が来ることを楽しみにしています。

 ありがとうございました。

 

 

 

過去のアイカツ感想はこちら

 

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