【前書き】
お疲れ様です。ネクサス系統です。
先日より遊んでいる逆転裁判456王泥喜セレクションのうち、逆転裁判4をすべてクリアしたので統括感想をこちらに書いていきたいと思います。
意欲的な要素がかなり盛り込まれた、「新章開廷」らしい意欲的な作品でした。ただ、それが全てうまい感じに行っていたのかというと……?
そんな逆転裁判4の感想について述べていきたいと思います。
(エピソードごとの感想も書いておりますので、そちらもどうぞ)
【点数】
6/10点
【短評】
ゲーム面・演出面に優れているが、キャラ描写・シナリオ構成に粗の多い佳作。
【良いところ】
・探偵パートを単純にさせない科学捜査
蘇る逆転で部分採用されていた科学捜査パートが本作では全編通して採用されていましたが、これが話を単調にしない良い要素だと思いました。
単純に旧作と比べて情報の出る幅が広がっていますし、話を聞いて移動して……よ単調になりがちな探偵パートにミニゲーム的な遊び方を提供してくれたのも楽しかったです。
4話の毒の検出なんかはまさかの驚きもあって、推理だけではたどり着けない要素を出してくれる演出としては◯。
シナリオ、ゲーム面、両方にいい影響を与えている要素でした。
・映像などの演出面
アニメーションムービーの採用や、登場人物の動き方がかなり進化していたのが印象的です。イントロのムービーは毎回事件への緊張感を高めてくれましたし、裁判中のモーションも多種多様で見ているだけでおおとなるとところ多かったです。
また、3話では映像を使った証拠品を出すなど進化した演出をきちんと遊びの幅につなげていたところも楽しかったですね。
逆転裁判4は、こういうゲーム面での手触りが良くて好きです。
・BGM
旧作の熱さを残しつつ、新章開廷の雰囲気のあるシュッとしたBGMが物語を盛り上げてくれていたと思います。
特にお気に入りはじんわりとした熱さが広がるような「王泥喜法介 〜新章開廷!」とシリーズおなじみの「追求 〜追い詰めないと」です。
・キャラクター
不満点もありますが、新規キャラクターの何人かは比較的気に入りました。
特に牙流検事は旧作の検事と比べると「真実」に重きを置いており、王泥喜に対しても倒すべき相手というより共闘相手的な風に見ていたような気がします。王泥喜たちをライブに呼んだりと個人的な交流もありますし、今までにない感じの雰囲気でしたが概ねその人間性自体は好きでした。
あとみぬきちゃんのキャラデザが好きです。
・フックの多いストーリー
今作はストーリー構成が旧作と比べてもかなり捻っている部分が多くて、それが強烈にこっちの興味を引いてくるような構成になっています。
被告人成歩堂からはじまりまさかの犯人が浮かび上がる1話、小さな意味不明な事件がどんどんつながっていく2話、音に映像に見立て殺人まである3話、裁判員裁判に過去の因縁が絡み合う4話。
特にどのエピソードも風呂敷を開いていく瞬間が楽しくて、イベントも多く高い濃度を保ったまま進んでいくのはやりごたえがありました。
この導入が面白かっただけに……みたいなところもありますけども。
【うーんなところ】
・人物の掘り下げが少ない
全体的に共通して言えることとして、話を進めることに注力した結果なのかキャラクターの掘り下げが全体的に足りないと思います。これがかなり色んなところに悪影響をもたらしていると思いました。
まず主人公の王泥喜くんですが、弁護士を志すに至った動機等個人的な掘り下げがかなり少ないです。これは初代の成歩堂くんが御剣の話を絡めつつ動機をきちんと描いていたのとは対照的です。
バックボーン自体は4話で明かされるのですが、結局のところ本人がそれを知ることがなく、細かい経緯も明かされないのでなんとなくのキャラクター性しか伝わってこないのがもったいないと思います。
シナリオの要所を他のキャラクターの活躍に席を譲ってしまっているところももったいないですね。
他の各話のゲストキャラクターのシーンも少ないことが多く、特に被告人の話が足りないことが多いのがかなりもったいないと思います。
暴力団だの別の犯罪をしている人だのただでさえ訳ありな被告人が多い中でその掘り下げがある程度されたのが4話くらいなもんですから、アクの強い彼らに感情移入したり「助けたい!」と思わせるだけの要素が不足しているように感じてしまいました。
というか全体的に今作は良くも悪くも登場人物の癖が強く、ちょっと倫理観的にも怪しい行動をする人物がかなり多いです。その上で人物描写が少ないのでとっつきにくい・好きになりにくい人が続出しまくっています。
ドラマに感情移入するうえで、これは大きな問題だと感じました。
・爽快感不足な構成
これは特に3話と4話の話になりますが、謎解き部分自体は結構力が入っていて面白い部分もあるものの肝心の真犯人の追い詰め方が煮え切らないものなので、爽快感が足りないと感じました。
追い詰め方が「状況を利用して証拠だけでは立証できなかった犯人を追い詰める」という形なので、どうもこう回りくどいんですよね。
もちろんその問い詰め方をしなければならない、というのがシナリオで説明されていることは重々承知なんですが、その周辺の話がきちんとされていないこともあってなんかもやもやしたまま終わったように思えちゃうんですよねえ……。
・描写不足感の目立つシナリオ
そもそも論として本作は、大きな説明不足だったり違和感がある描写がかなり多いのも没入感をそぐ要素だと思いました。
わかりやすいところで言うと3話の「銃の反動」についてとか過去編の「その辺でもらった証拠を突きつけてしまう成歩堂」とか、納得のいく説明がされなかったり流れに違和感のある描写が多くて、本作がやろうとしていたシナリオをちゃんと出力しきれていないように感じます。
一つ一つの事件が繋がって、大きな一つの真実につながる……という構成自体は面白かったんですけどね。
それを100%見せたい形で見せれたかというと、違うのかなと思います。
【総評】
演出面の進化や調査パート・裁判パートそれぞれでできることが増加したことになどにより、遊びの幅が増えゲームとしては確実に進歩している作品だと思います。BGMも新章開廷にふさわしい新しい風を感じるもので、作品開始時の盛り上がりは十分すぎるくらい面白かったです。4話すべてが連続性を持っていること、各エピソードに今までにないシチュエーションをぶっこむところなど、意外性を軸にした構成も挑戦的でした。
ただ通しで見た時にはやっぱりシナリオ面で気になるところが多すぎて、諸手を上げて称賛するのは難しいですねえ……。もう少し全体的にやりたいシナリオに対して描写のバランスの取れた作りになってくれれば、何かが変わったかもしれません。
やろうとしていたことは面白かったが、それを表現しきれなかった惜しい作品……といったところでしょうか。
愛せる作品だっただけにもったいなかった。惜しいなあ。
それでは、次回は逆転裁判5の総評でお会いしましょう。