時空を超える「これすき」

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映画「グリッドマンユニバース」ネタバレあり感想 ~グリッドマンの全てが、そこにはあった~

 

 

 

 

 

 

 幼いころ、姉が見ていたというビデオを引っ張り出して見た「電光超人グリッドマン」という特撮があった。

 当時(2002年ごろ)からしてもすでに古い作品ではあったが、インターネットを題材にした挑戦的な描写や中学生が主人公である特撮という点、なによりグリッドマンのスマートなデザインとコンピューターワールドの世界観に惹かれ、親に頼んでわざわざ昔のおもちゃを買ってもらうくらいにドはまりした。

 当時両親の仕事の都合で家から遠い場所の保育園に通っており、近所に友達のいなかった自分にとってはヒーローものの特撮を見ることだけが楽しみであり、だからこそヒーローと過ごした時間は幼少期の思いでそのものである。

 その中でも、グリッドマンという作品には特段思い入れがあった。

 

 そして、そんな日々から約20年の時が流れた。

 気づけば、グリッドマンは現代にアニメーションとしてよみがえり、グリッドマンからダイナゼノン、そして今回のグリッドマンユニバースなんていう劇場版までつながっていた。

 思い出の作品が現代に生まれ変わり、さらには大人気になって映画まで作られる。

子供のころ同世代では自分くらいしか知らなかったであろう作品を、今や様々な人が話題にし、劇場に赴いている。そんな光景が今でも不思議でしょうがない。

 そんな思い出の作品の最新作を、今日劇場で目にしてきた。

 そこには……自分が体験してきたグリッドマンの、すべてがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダイナゼノン」のアフターとして

 

 本作は大きく分けて、3つの側面がある。

 アニメダイナゼノンとグリッドマンのコラボとしての側面、電光超人グリッドマンのファンサービスとしての側面、そして、アニメグリッドマンの正式な続編としての側面だ。

 このそれぞれに触れていくことで、グリッドマンユニバースという作品の感想としていきたい。

 まず、ダイナゼノンとグリッドマンのコラボとしてだが、元からダイナゼノンは一つの作品として奇麗に完結していたので、グリッドマンと比べるとアフターとして目新しい要素は少なかった。

 が、見どころがなかったかといえばそんなわけではない。

 まず何といっても驚いたのが新世紀中学生として復活していたガウマと蓬たちの再会だろう。テレビ本編ではかなり唐突な別れだったが、今回彼らは再び出会い言葉を交わしていた。

 六花の家での夜の蓬とガウマの会話は本編のことを見るととてもグッとくるものだったし、久しぶりにダイナゼノンを全員で操る戦闘が見れたのだってそれだけでとてもうれしいものがあった。

 本編中では決着のつかなかったガウマとヒメの関係性も、うたかたの夢のような形であったが彼が振り切る形で描写されたのも嬉しかった。ガウマさんと久しぶりの再会をしてあのノリでいられるヒメ様、きっと古代でもずっと尻に敷いていたんだろうね。

 また、ほかのレギュラーメンバーも何気ないシーンであの時から成長している様子が見えた。

 暦は頼りない部分はあまり変わっていないものの、最終決戦時はすぐに覚悟を決めていたり就活中なことにあんまり焦ってなかったりとなんだか落ち着いたように見えた。ちせもゴルドバーンとの思い出を大切にしつつ、精神的に不安定な部分があまり見えなくなったような気がする。久しぶりの友達との再会も嬉しい描写だ。

 2代目さんが地味に巨大化して戦闘していたシーンもなかなかなツボだった。いやあれ笑わないのは無理じゃない?

 そしてなによりよもゆめです。よもゆめ。

 何を隠そう、自分はよもゆめのSSを書いちゃったことがあるくらいにはよもゆめ優生思想なので(下記)、これでもかってくらい濃厚なよもゆめが各所にあってたまらんかったです。

 

www.pixiv.net

 

 開幕のやたら距離が近いところもそうだし、六花に「はい付き合ってます」って即答するのとか、蓬にコスチューム合わせをノリノリでするところとか、もう何気ないシーンがかわいらしい。パンフレットでも言及されていたけど、いろいろつきものがおちた夢芽さんが素直に笑うシーンがめちゃくちゃ増えてるのがとてもよかった。蓬と一緒にいるかけがえのない不自由な日々を楽しんでいるのが伝わってきてもう悶えそうになる。

 あと今回のメインの祐太と六花がわりとうじうじしてるので、それに対し「えまだ付き合ってないの?」みたいな感じで恋愛の先輩面をしているところとか「高校生~!」って感じでたまらないっす(蓬からすれば六花側からの好意もバレてるってのが素晴らしいよね)。

 あと蓬君はもう一人の主人公としてかっこいい場面が多かった。祐太にアドバイスするところも多いし、インスタンスドミネーションで時間を稼ぐところなんかもまあイケメンでね……。

 ダイナゼノンが王道ボーイミーツガールとして大好きな人間としては、再び彼らに出合えたという事実だけでも最高でした。

 あと一瞬でた怪獣優生思想は……はっとしちゃったよね……。

 

 

 

「電光超人」のファンサービスとして

 

 続いて、特撮版のファンサービスについて。

 特撮版のストーリーを大胆にアレンジしたアニメグリッドマンや、特撮版の一つの要素をアニメ一作品として作り直したダイナゼノンと違って、今作はストーリーラインに特撮版の要素は取り入れられていない。

 じゃあ特撮版からはもう乖離してしまったのかというと、いやそんなこともないのが本作のすごいところ。今作は、たぶん初めて「グリッドマン」というキャラクターの掘り下げが行った作品になったからだ。

 そもそもの彼は特撮版時代から直人たちの協力が山ほどあってようやく戦えた存在で、アニメ版でもグリッドマンでも敗北の後共に戦う仲間を得てなんとか勝利できたという背景がある。そんなグリッドマンのヒーローとしての姿だけじゃない「弱さ」が描かれていたのはとても驚いた。祐太に対して「時間を奪ってしまったことへのうしろめたさ」を吐露する後半のシーンなんかは、彼の人間(とここでは称す)性が一気に見えた感じがして、あこがれのヒーローがとても親しみ深い感じになったと感じた。

 彼が歩んできた戦いの中で得た繋がりが、最後は彼の勝利へとつながるという構図はシンプルに熱かったし、グリッドマンというコンテンツの歴史をそのままぶつけられたようだった。

 また、シンプルに本作は特撮版のネタが多いのもファン心をくすぐってくれた。

 開幕から「人間掃除機(祐太のクラスの出し物)」に占いネタで爆笑しそうになっちゃったし、途中には特撮時代の日常BGMがまんま流れるシーンがあって(演劇の準備を蓬たちとするところ)、もうファンサービスが旺盛すぎてたまらなかった。

 なにより、特撮版の主人公である直人の登場だ。

 いやあれが作中では直人本人であるとは明言されてはないんだけど、声優が直人役の人って時点で「そういうこと」なんだと思う。

 グリッドマンユニバースの中に、直人がいる。それはグリッドマンのこれまでの記憶の中に確かに直人がいるということそのものであって、その何気ない描写が自分にはどうしようもなく、嬉しかった。

 確かにあのグリッドマンの先にある作品だと感じられたことが、特撮ファンとしては何よりも幸せなのだ。

 

 

 

「アニメ グリッドマン」の完結編として

 

 そして、この映画の主題であるアニメグリッドマンのアフターエピソードとしての側面について。

 ……正直なことを言ってしまうと、自分はSSSS.GRIDMANという作品がめちゃくちゃ好きなわけではなかった。

 とてもクオリティの高い素晴らしい作品だと思うし、リアルタイムは結構楽しんではいた。アカネの物語としてみれば、きれいにまとまっていたとは思う

 ただその一方で、アカネに作られた世界の祐太や六花たちの物語としては、結構消化不良を感じてしまったのも事実だった。

 特に祐太に関しては、「グリッドマンが宿ってからの二か月の記憶がない」という結末ゆえに、12羽の中で積み上げてきてしまったものが一瞬で0になってしまったような気がして、驚きというかなんというかぼんやりとして虚無感みたいなものを感じてしまったことを覚えている。

 祐太の物語だと思っていた部分が実はグリッドマンの物語で、六花や内海たちとどこかずれてしまったこと。そして彼ら彼女らが「作られた存在である」ということ。

 そのちょっとメタ的なネタを取り扱ったラストは、描かれてきた物語の意味が色あせてしまうような衝撃が自分の中であった。なんというか、フィクションを強く感じてしまったというか……そんな感じ。

 でもこのグリッドマンユニバースは、そこに完璧なアンサーを出してくれたのだ。

 祐太に関しては、グリッドマンから離れた祐太本来の人格をしっかりと書いてくれた。小さなことに一喜一憂する可愛らしいところがあると思いきや、必要だと思えば自分の身を顧みることもなく危険を背負って戦えるヒロイックな部分も持ち合わせていて、SSSSで見せてくれた彼の姿は少なからず祐太としての面でもあったと教えてくれた。

 自分だけ2か月の空白を背負ってもなお六花と仲良くできるからいいと言ってみたり、グリッドマンに対し「自分と入れ替わっていた日々は楽しかった?」と聞ける懐の深さがあったり……そんな彼が持つ魅力的なところを改めて知ることができたのはすごく嬉しかったし、かっこよかった。六花と無事に付き合えて心の底からよかったなあと思えたのは、彼の描写が素晴らしかったからだと思う。

 六花も、SSSSでの経験を台本の作成という形で向き合いなおし、今の祐太とちゃんと向き合ったうえで「彼が大切」という答えを導き出すまでがしっかり描かれていてよかったなあと思う。祐太目線で見てると気づきにくいんだけど、結構この映画の六花って祐太に好意的なんだよね。夜のブランコのところとかなんなら祐太の言葉を促しているまである(本編前とかだったら祐太の質問の時点でいやな顔してたような気もする)。最後の赤面なんかはもう……なんか言う必要ある? ってくらい可愛い。相手が祐太なのでよもゆめと比べるとちょっと進展遅そうだけどまあ仲良くやっていってほしい。

 なによりこの2人に関しては、グリッドマンと出会ったことで結ばれたと思えるところがとても素晴らしい。グリッドマンがいない世界での2人は祐太から告白するような未来はあったかもしれないが、六花が祐太を知る機会はなかった以上その酷薄にいい返事が返ってくる可能性は低く見える。

 グリッドマンと出会い、祐太が戦って六花と触れ合って、そのうえで祐太が記憶を失うことで六花が自分の気持ちと向き合いなおす時間が生まれた。本編の六花の言葉で言えば「好きになる時間」があったからこそ、2人の思いは通じ合ったのだと思う。これはとってもグリッドマンユニバースなことだと思わないだろうか。

 あと、この2人のシーンを挟んだうえでエンディングの最後に「もっと君を知れば」のピアノ版を流すのはとてもずるい。「もっと君を知れば 今よりも強くなれる」……まさに、彼らの出会いからの日々そのものだもの。

 それと、今回は祐太と六花のラブストーリーではあったけれど、ほかのメンバーもTV本編から続く活躍を見せてくれた。

 ちゃっかりはっすといい感じになっている内海は精神的に成長した感じが見えて祐太の良き友人として彼を支えていた。新世紀中学生は相変わらずわちゃわちゃしていたし、アカネはまさかのアレクシスと参戦。友達のために頑張ろうとする姿やアンチとのシーンでは彼女本来のやさしさが見えたし、実写世界では友達がいるような描写もあって、ああ元気に生きているんだなあってとっても嬉しくなったものよ。

 そして、「作られた存在」であることに対しても完璧なアンサーがあった。グリッドマンユニバースの謎がアンチくんと2代目から明かされる公園のシーン。「作られた存在」であること突きつけられた蓬が同じことを知らされた経験のある六花たちに尋ねるシーン。

 ここの回答が、個人的にこの映画を見てよかった思う最大の理由かもしれない。「作られたとかの実感はないけど、少なくとも自分たちが自分たちが思って考えた通りに行動している」というシンプルな答えは、彼らが確かに「生きている」存在であると感じさせるには十分すぎた。たとえ普通の人間と違う生まれ方をしていても、彼らには心があって今を生きている。それだけなのだと知ることができた。

 全体を通して、SSSSで積み重ねたものを踏まえつつ取りこぼしていた要素をしっかり回収していて、自分がSSSSで消化不良に感じられたものが全て回収されていた。

 まったく文句が浮かばない、素晴らしい構成だった。

 

 

 

総括

 

 上でいろいろ書いてきた要素も、あくまでこの映画の一部分でしかない。このグリッドマンユニバースという作品にはもっともっともっとたくさんのものが詰まっている。これまでのグリッドマンそのその先がたくさん詰まっている。

 グリッドマンの「全部」が、ある。

 それほどまでにボリューム満点で、それでいてそのすべてが最高という、とんでもない作品なのだ。

 電光超人グリッドマンとともに幼少期を過ごした自分も、SSSS.DYNAZENONのボーイミーツガールに根っこまではまってしまった自分も、SSSS.GRIDMANの描かれなかった部分にもやもやしていた自分も。

 そのすべてが楽しめる最高の映画だったといえる。

 自分のグリッドマンと歩んだすべての思い出を、こんなにも力強く肯定してくれたこの映画は、もはや傑作とか神作とかそんな言葉にすら収まらない。

 自分の人生そのもののようにも感じられる、本当に素晴らしい作品だった。

 グリッドマンユニバースがこれでひと段落なのか、それともこれからも広がっていくのかはわからない。それでも、一つだけ言えることがある。

 グリッドマンユニバースは最高の映画で、最高の思い出となる作品であるということだ。

 

 この映画を作ってくれたすべての人間に感謝します。ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

©円谷プロ©2023 TRIGGER・雨宮哲/「劇場版グリッドマンユニバース」製作委員会