夏映画の感想
【点数】
6.0/10.0
【短評】
全体的に粗削りで勢い重視だが、愛せる所も多くてなんだかんだ好きな作品
【詳細な感想】
この仮面ライダーガッチャードという作品に対する感想をまとめると「めちゃ面白くはないけど好き」というものになります。いやまあそこそこ普通に面白いんですけど、でも感想としてはこうまとまる感じがしますね。
ストーリー全体で描写物足りなかったり、もっと深く掘り下げてほしいところだったりが頻発する一方で、愛着の持ちやすいキャラクターとか王道なシナリオ運びとかガチャガチャしてて楽しい演出とか魅力的な要素も多く、粗さも個性として受け止めてしまえば良いところに目が向いてそこからだんだん好きになる。
要は「好きになる取っ掛かり」が多い作品だったのだと思います。それだけやりたいことが詰め込まれていて、それゆえにギチギチになっちゃったところはあったのかもしれませんけど、トータル振り返ると悪くない作品だったなと今は思っています。
とはいえ、シナリオ面で不満がたくさんあったのは事実。
まず全体的に設定がふわふわしてたことですかね。例えば錬金連合ってのはどんな組織で、錬金術っていうのは魔法とかとどう違くて、錬金アカデミーっていうのがどういうものなのかみたいな、物語の基盤になりそうな部分すらだいぶぼやっとしてた印象があります。前半のこの作品はかなり入り込み悪かったんですけど、ここの描写の粗さが重かったように感じます。要は世界観の基準がないので、一個一個の描写をどう取ればいいのかわからないというか。結局いまだによく分からなかった所も多いです。
他に言うと、全体的に話のオチがちょっと弱いところも多かったなと思います。特に惜しいなあと思ったのがスパナ変身回(21話)、ロミジュリ回(31話)、レインボーガッチャード回(38話)あたり。この回に3つとも前振りはほぼ完璧なのに後半がちと失速したように感じました。なんでかって思ったんですけど、この3話とも「登場人物への壁の提示」は良かったんですがその解決方法が「当人たちがもともと持ってたものに由来する」ことだったからだと感じます。苦難に対するアプローチが「成長」というより「気づき」という感じで、本人の気の持ちようで乗り越える感じがあっさりしたドラマに感じる理由に感じた理由なのかなと。もちろんそれ自体は悪いことじゃないんですけど、ガッツリ事前の展開で落としきった割には普通だったなあって感じはしました。
……書いてて思いましたが、そういう意味でいうとガッチャードのキャラドラマはもう一歩踏み込めたような気がしますね。キャラクターの本来の性格が割としっかり認められる分なのか、そこからの変化・成長の描かれ方には物足りなさがありました。もちろんラケシスみたいに変化がシナリオにおいて役割を持つ存在もありましたけど、例えば宝太郎の描写一つとっても、りんねに対する感情とか、スパナとのぶつかりあいとか、クロトーとの対話とか、本編でも別になかったとはいいませんけどもう少し深くやっても良かったんじゃないかなと思いました。
キャラの印象が安定していたという意味ではこの作品は良かったのですが、キャラ同士の「化学反応」はやや少なかった感じがしますね。今作で一番ちゃんと関係性が描かれてたキャラ、もしかして加治木と聖さんなんじゃないかな……。
……とまあ色々いってきましたが、ここからは逆に好きだったところについて。
まず何と言っても作品の雰囲気ですね。どこか暖かみがあって爽やかで、前向きな推進力を感じる作風です。難しいことを考えなくても楽しめる明るく楽しい作品を作ろうとしているのが節々から感じて、その点がかなり好印象でした。キャラクターがワチャワチャ交流してるときはガッチャードって作品の良さがかなり出ると思いましたし、そういう回が自分としても気に入ってる傾向が強いです(5話とかはその極み。あれは本当に素晴らしい)。
その上でゆるいだけじゃなく、きちんとシリアスなところはシビアな展開を見せてくるので作品としてのメリハリはかなりありました。クリスマス回とかレインボーガッチャード回とかかなりショッキングなエピソードも少なくないですし、そういう過酷な描写があるからこそ登場人物たちの頑張りが光る部分もあったと思います。
シナリオ運びもシンプルでひねりがないことも多いですが、逆にストレートで王道と捉えれば中々悪くありません。変にこねくり回さずこちらの見たいツボを抑えてくれるという意味ではむしろ好感触ですらあります。
また、ガッチャードデイブレイクの扱い方だったり劇場版との連動だったりと意外と細やかな配慮の利いている部分もあって、いろんなメディアを追ってるとより楽しみやすい作りになってたなあと思いました。レベルがめっちゃ高い脚本って感じではなくても、こちらを楽しませる要素自体は詰まってたなと思います。
それと演出面の凝り方も面白かったです。ガッチャードはフォームが多用でかけ合わせるケミーによって戦闘フォームもガラッと変わるんですが、それを前半で使い果たさずに色んな形で魅せてくれたのが良かったですよね。特にレインボーガッチャードはケミーの個性も出しつつ基本フォーム派生を再登場させられるし、フレーバー的にも宝太郎にぴったりで素晴らしかった。
演出はシナリオ面にもいい感じに関与してて、シンプルなシナリオでもそこそこの満足度かあるのは演出の気合の入り方があったからだと思います。そこに役者の熱い演技が加われば十分楽しめました。
総じていえば満足寄りの作品です。愛着を持てたのがデカかったですね。
【総評】
なんというかこの作品、すごくいいところとなんともいえないところがすごくはっきりでてる作品だったなぁ……と思います。正直この印象は序盤から全く変わってないです。ただそれらの要素を差し引きしていった感想としては、面白過ぎはしないけど好きだなあって感じになる。この好ましい感じも最後まで変わらずで、そういう意味では誠実に作られてた作品だなと思っています。
面白いかはともかく、好きな作品でした。ありがとうございました。
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