【前書き】
ウォッチパーティがサービス終了してしまうというお知らせに涙を流している皆さん、こんにちは。
我々オタクという得た感情を発散しないことには息ができないマグロにとって、リモートで感情を分かち合う手段であったウォッチパーティが奪われてしまうのはまるで足を失うようなものかもしれません。
そんなわけで、この機能の追悼も兼ねて友人を数名集めて、名作映画と言われており前々から気になっていた「CUBE」を見ようと思います。
アマプラで見られませんでした。
仕方ないので日本版を見ようと思います。
【点数】
5.0/10.0点
【短評】
題材の掛け算を盛大にミスっているが、テーマを貫きまとまってはいる佳作。
【良いところ】
・テーマが一貫されていた
本作は複数の登場人物が登場するワンシチュエーションのホラーものになります。その中で不穏とか疑心暗鬼とかが話のメインに来そうなものですが、話のメインテーマはかなり明瞭に絞って描かれていました。
それは、CUBEをつらい現実に置き換えての「現実との戦い」というものです。
弟を追い詰めて自殺の最期のトリガーを引かせてしまった後藤が、弟と似た境遇の千陽との交流を通してあの時できなかった「手を伸ばす」ということをし、未来に繋ぐ。それによって助けられた千陽が前を向いて、現実と向き合い直す覚悟を決める……というのがメインのシナリオだったわけですが、このシナリオを見せるための要素は概ね揃っていたと思います。
やりたいことが明瞭で、そこに向かって真っ直ぐ話が進んでいたため薄味ではありますが消化不良感はあんまり感じませんでした。ラストのちょっと爽やかな余韻からの星野源の主題歌が流れるエンドロールは、(好みは分かれそうですけど)やりたいことをきちんと貫いている気がして好感触です。
・テンポが良い
人間ドラマを核にしてるのでデスゲーム的なテンポは良くなさそうなんですが、立ち上げが終わったあとはキャラの掘り下げと謎解きシーンがテンポ良く交互に進むので退屈で眠くなるようなことはありませんでした。
掘り下げる点と掘り下げない点の取得選択がはっきりしてて、物語として贅肉になりそうなところをうまく切り落としてたのが良かったんだと思います。
謎解き部分とかは割と合理性もありましたね。これ自体は原作ベースなのかな。
・岡田将生の怪演
あんまり演者についてどうこういうことはないんですが、岡田将生さんの豹変演技はすごかった。あんまり俳優詳しくないけど、この人はすごいイメージある。
リーガル・ハイとかでも思ったんですけど、この人普通そうな人が豹変していく様を演じるのがウマすぎる気がする。
最近ラストマイルって映画でメインキャラで出るらしい事も知ったのでそこも結構楽しみにしてます。
個人的にはシーンが切り替わったら笑顔で背景に溶け込んでたところが好き。
【うーんなところ】
・CUBEという舞台と人間ドラマの噛み合いが悪い
個人的にCUBEという世界観の見どころって無機質さだと思います。ちょっと綺麗さまである機械的な空間から命もなんも考えてないようなひどい罠が飛んでくる、という人の命をいじめるための冷徹なシステム、という感じ。
でもこの舞台設定と信頼とか未来への希望見たいな前を向く人間ドラマがあんまり噛み合ってない気がするんですよね。命が淡々と刈り取られていく空間で、一つの命の感情を強く描きまくっても仕方ないというか。
実際ドラマを深堀りするためにトラウマ映像再生とかいうオカルティック過ぎるトラップもありましたし。いやまあなんか、テクノロジー的にはできるのかもだけど。
・緊張感不足
この映画107分なんですが、最初に人が死ぬのは(オープニングを除くと)物語が折り返したあとです。
これはねえ、遅い。遅いです。
いやまあ演出意図はわかるんです。ドラマチックに倒れましたから。この人の死を印象付けさせないといけない場面なんだ! というのはわかります。
ただ、そういうドラマの深さと連動するシーンでしか人を殺さないと「それ以外の危機」がちょっと薄くなっちゃうと思うんです。だから自分は後半まであんまりドキドキしなかったんだと思いますね。
この作品、25分地点くらいでひとり死ぬだけで相当緊迫感が違ったんじゃないかな。
・その他ツッコミどころ
描写規制の関係かかなりグロ表現がチープです。
あと会社役員の人はキャラがぶれてた気がします。
【総評】
前評判的に全然期待しないで見た作品なんですが、そこそこ纏まってたなあと心から思います。いや傑作ではないし色々チープではあるんですが、見れる。そしてやりたいことも割とできています。
ウォッチパーティしながら見ましたが、皆割と「思っていたよりは……」みたいな反応をしてましたね。まあ期待値下げてたからこそ許せたって感じですが。
この作品への感想は「中身が何も無いパッケージ詐欺の弁当」が出てくると思ってたら「量はそこそこで主催副菜ごはんがそろってるけど味が薄い弁当」が出てきてまあコレくらいならいいか、というだけであって、別に褒め立てるつもりも特にないです。
でも視聴後の味わいが悪くないのは本当なので、まあこんな時間もありかなくらいで思っておこうと思います。
ではまた。